研究課題/領域番号 |
17K15078
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北沢 創一郎 立命館大学, 薬学部, 助教 (50779030)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 圧力 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病関連タンパク質であるPINK1によりSer65がリン酸化されたリン酸化ユビキチンは、水溶液中で二つの天然状態(MajorとMinor)を持ち生理的条件下でおよそ7:3で揺らいでいる。リン酸化ユビキチンはパーキンソン行関連タンパク質であるParkinを活性化させる。また、リン酸化ユビキチンを模倣したリン酸化ユビキチン模倣変異体(S65E,S65D)はPINK1をバイパスしParkinを活性化させることが知られている。本研究ではMajorとMinorの構造の揺らぎがどのように機能に影響を与えているかを解明することを目的としている。 コンホメーション変化に敏感な高圧力NMR法を用いてリン酸化ユビキチン及びリン酸化ユビキチン模倣変異体の構造揺らぎ研究を行った。リン酸化ユビキチンのMajor状態は、非リン酸化ユビキチンと類似した化学シフトの圧力応答を示したことから、Major状態は非リン酸化ユビキチンの構造揺らぎを保存していることが推察された。それに対して、Minor状態では化学シフトの圧力応答が非リン酸化ユビキチンと異なる結果を得た。これは天然状態が非リン酸化ユビキチンと明らかに異なった構造であるためであると考えられる。 13C/15N標識されたリン酸化ユビキチンにより、NMR研究のための帰属測定が完了した。また、構造計算のために常磁性プローブを導入したリン酸化ユビキチンの作成を行いNMR測定を行った。 リン酸化ユビキチンの機能評価系のため、Parkin、UBE2、UBE1の精製系の確立を行った。固定化金属アフィニティークロマトグラフィー及びGSTタグ融合蛋白質アフィニティークロマトグラフィーによりこれらの蛋白質の精製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
立体構造研究及び構造揺らぎ研究は遅れている。昨年度までにリン酸化ユビキチンの立体構造についてはNOEによる距離情報と二面角情報から構造の計算に成功した。追加で常磁性緩和促進法による距離情報を集め構造計算に応用する予定であったが、常磁性プローブ導入のためシステイン残基を導入した複数のユビキチン変異体についてtcPINK1によるリン酸化修飾を行ったところ、ほとんどのユビキチン変異体についてリン酸化反応が進行しなかった。リン酸化反応が進行した変異体について構造計算に導入し計算を行った。 構造揺らぎ研究についてはリン酸化ユビキチンの重水素交換NMR法による測定を新たに行った。また、水分子交換の反応の圧力依存性から安定性を評価する方法の考案し、その手法の確立を野生型ユビキチンで行った。 Parkin,E1,E2の精製系の確立は完了した。
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今後の研究の推進方策 |
Parkin,E1,E2による機能活性の評価を行っていく予定である。具体的にはウエスタンブロッティング法やEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)法などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部実験装置の調子が悪く様子を見ていたことと、抗体や同位体などの高価な試薬類の購入を一部止めていたため次年度使用額が発生した。来年度は抗体・同位体などの購入に充てる予定である。
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