研究実績の概要 |
パーキンソン病関連タンパク質であるPINK1によりSer65がリン酸化されたリン酸化ユビキチンは、水溶液中で二つの天然状態(MajorとMinor)が存在し、水溶液中で7:3の割合でNMR的に遅い構造変化で揺らいでいる。リン酸化ユビキチンはParkinを活性化させ、ミトコンドリアの品質管理にかかわる。リン酸化ユビキチンのMajor状態は非リン酸化ユビキチン様構造である。一方でMinor状態はC末端b-sheetのスライドとそのN末端側に新規形成されたa-helixが存在する。コンホメーション変化に敏感な高圧力NMR法の解析によりリン酸化ユビキチンの二つのコンホメーションは、ほとんど分布率の変化が観測されなかった。これは二つの状態の体積差がほぼ一定であるということを示す。また、PINK1をバイパスしParkinを活性化させるリン酸化ユビキチンを模倣した変異体(S65E,S65D)は、高圧力NMR法ではMinor状態の存在は確認されなかった。リン酸化ユビキチンのMajor状態は非リン酸化ユビキチンでみられるコンホメーション変化が保存されていた。その一方Minor状態のコンホメーション変化は、非リン酸化ユビキチンでみられるそれとは異なった。Minor状態のコンホメーション変化は、Major状態と比較すると、ユビキチンの重要な相互作用部位であるb-sheet表面の構造変化が抑えられ、新たに形成されたa-helixで信号強度の減弱が観測された。これはMajor-Minor間の分布率に変化がないことからMinor状態で新規形成されたa-helix部位の安定性が低いことを示唆する。以上の結果から構造変化が見られたb-sheet部位より新規形成されたa-hliex部位の安定性が低くMajor状態からb-sheetがスライドしたが、a-helixが形成されていない中間状態の存在が示唆された。
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