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2017 年度 実施状況報告書

クライオ電子顕微鏡によるスプライソソーム活性中心複合体構造変化の可視化と機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15080
研究機関沖縄科学技術大学院大学

研究代表者

滝沢 由政  沖縄科学技術大学院大学, 生体分子電子顕微鏡解析ユニット, 研究員 (00434291)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードスプライソソーム / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析
研究実績の概要

スプライソソームは、pre-mRNAよりイントロンを正確に除去し、エキソンをつなぎ合わせ、成熟したmRNAを生成するスプライシング反応を触媒するRNA-タンパク質複合体である。そのスプライソソームは、すべての真核生物に保存されており、100種類以上もの構成タンパク質と5種類の核内低分子RNA (snRNA)が正確に会合、解離を繰り返すことにより機能している超分子複合体の1つである。本研究は、pre-mRNAスプライシングを触媒するスプライソソームの活性中心である、U5 snRNA-タンパク質複合体(U5 snRNP)の(1)成熟過程、(2)リサイクル過程における構造・機能変化を解明し、スプライシング機構への役割を明らかにすることを目的としている。
(1) U5 snRNPの成熟過程の構造解析をするため、分裂酵母のU5 snRNP前駆体の精製を行った。まず、U5 snRNP前駆体に特異的に結合しているタンパク質の遺伝子をクローニングした。その標的タンパク質を使い、U5 snRNP前駆体のアフィニティ精製の条件検討を行った。その結果、U5 snRNP前駆体をネガティブ染色電子顕微鏡法により確認できるレベルまで精製を行うことに成功した。今後は、今回得られた分裂酵母U5 snRNP前駆体をクライオ電子顕微鏡構造解析し、現在までに公開されているスプライソソームと構造を比較することにより、スプライソソーム活性中心であるU5 snRNPの成熟過程における構造変化を明らかにする。
(2) U5 snRNPリサイクル複合体の構造解析を行うため、スプライシング後期課程に関与するタンパク質を用いてアフィニティ精製を行った。精製された複合体を、クライオ電子顕微鏡で観察した結果、今回精製された複合体は、均一性が低く更なる精製条件の検討が必要であることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、準備段階で既に粗精製まで進んでいたU5 snRNPリサイクル複合体を、密度勾配遠心法と化学架橋を組み合わせたGraFix法により、精製を行いクライオ電子顕微鏡で観察した。その結果、精製された複合体は、均一性が著しく低くいことが分かった。スプライソソームは、多くのタンパク質が会合解離をして働くことが知られており、均一性が低く精製が難しいことは、申請書にも記載してある通り折り込み済みである。そのため、U5 snRNPリサイクル複合体の精製に関しては、精製方法の更なる検討が必要である。次に申請者は、U5 snRNP成熟過程のクライオ電子顕微鏡構造解析を行うため、分裂酵母のU5 snRNP前駆体の精製法を検討した。U5 snRNP前駆体をアフィニティ精製するため、分裂酵母内でU5 snRNP前駆体に特異的に結合しているタンパク質の遺伝子を、分裂酵母大量発現系ベクターへクローニングした。その標的タンパク質を分裂酵母内でTAP(Tandem Affinity Purification)タグと共に大量発現させることにより、精製用に大量培養を行った。その後、U5 snRNP前駆体のアフィニティ精製による複合体の精製純度を高める検討を行った。その結果、U5 snRNP前駆体をネガティブ染色電子顕微鏡法により確認することに成功した。これにより、U5 snRNP成熟過程のクライオ電子顕微鏡構造解析への試料調製が大きく進んだと考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、U5 snRNP前駆体を中心に、更に精製度を高める密度勾配遠心法やゲル濾過カラムクロマトグラフィーを検討する。精製された複合体は、質量分析法により、含まれる構成タンパク質の同定を行う予定である。U5 snRNPリサイクル複合体に関しては、より均一な複合体を精製するため、アフィニティ精製を行う際に、現在使用しているタンパク質とは異なる標的タンパク質の使用を検討する。U5 snRNP前駆体は高純度に精製でき次第、クライオ電子顕微鏡による画像撮影を行い、単粒子解析により3次元構造を計算する予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、試料精製の検討に時間がかかり、クライオ電子顕微鏡用試料作製の条件検討に使用する予定だった電子顕微鏡用グリッドおよび電子顕微鏡用消耗品の使用数が少なくなったため、次年度に追加で購入予定である。次年度は、引き続き試料調製用消耗品を購入すると共に、クライオ電子顕微鏡単粒子解析の効率化を図るため、ワークステーション内に組み込むGPUを追加で購入する予定である。加えて、研究成果発表のための学会参加費用と論文掲載費用を見込んでいる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Structural Basis of Heterochromatin Formation by Human HP12018

    • 著者名/発表者名
      Machida Shinichi、Takizawa Yoshimasa、Ishimaru Masakazu、Sugita Yukihiko、Sekine Satoshi、Nakayama Jun-ichi、Wolf Matthias、Kurumizaka Hitoshi
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 69 ページ: 385~397.e8

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2017.12.011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cryo-EM structure of the nucleosome containing the ALB1 enhancer DNA sequence2018

    • 著者名/発表者名
      Takizawa Yoshimasa、Tanaka Hiroki、Machida Shinichi、Koyama Masako、Maehara Kazumitsu、Ohkawa Yasuyuki、Wade Paul A.、Wolf Matthias、Kurumizaka Hitoshi
    • 雑誌名

      Open Biology

      巻: 8 ページ: 170255~170255

    • DOI

      10.1098/rsob.170255

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Architecture of the heterochromatin unit revealed by cryo-EM2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshimasa Takizawa, Shinichi Machida, Masakazu Ishimaru, Satoshi Sekine, Yukihiko Sugita, Jun-ichi Nakayama, Hitoshi Kurumizaka, Matthias Wolf
    • 学会等名
      Biophysical Society 62th Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Cryo-EM structure of heterochromatin unit by human HP12017

    • 著者名/発表者名
      滝沢由政、町田晋一、石丸雅一、関根慧、中山潤一、胡桃坂仁志、マティアスウォルフ
    • 学会等名
      第17回日本蛋白質科学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] Cryo-EM structure of heterochromatin unit by HP12017

    • 著者名/発表者名
      滝沢由政
    • 学会等名
      生理研研究会 EM ワークショップ
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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