研究課題
癌関連の核内顆粒として知られるSam68 nuclear body (SNB)は、RNA分解酵素感受性を示すことなどから、顆粒構築に必要なRNAが存在すると考えられる。私たちが難溶性RNAを同定したHeLa細胞においてもSNBは存在するが、難溶性RNAの中には、SNBを構成するRNAは無かった(Chujo et al. EMBO J. 2017)。また、核内顆粒の骨格として働く既知の長鎖ncRNAの中には、難溶性を示さない核内顆粒構築ncRNAも知られている。従って、難溶性を示さないRNAがSNBの構築に関わると考えられ、このように難溶性を示さない核内顆粒構築RNAを探索する方法を世界で初めて開発することを目的とした。一般に核内顆粒を構築するRNAは、必ずその核内顆粒の内部に存在することから、私は、SNBを構築するRNAの探索方法として、Fluorescence activated cell sorting (FACS)法の活用を試みることを考えた。すなわち、FACSによってSNBを単離し、内部のRNAを同定すれば、SNBを構築するRNAの有力候補を得られるはずであると考え、この方法をFluorescence activated body sorting (FABS)法と名付けた。研究材料としては、蛍光タンパク質Venusを融合したSam68 (Venus-Sam68)を安定的に発現するHeLa細胞を使用し、(1)セルソータにより直径200 nmの微細粒子の分離可能性の確認、(2)細胞の前処理方法の開発、(3)FACSによるSNBの単離を実施した。単離した顆粒においてSNBのマーカータンパク質である内在Sam68と内在HNRNPLは濃縮した一方で、核小体マーカータンパク質Nucleolinはほとんど含まれていなかったことから、FABS法によりSNBの濃縮が行えたことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
FABS法により、Sam68 nuclear bodyを濃縮することができた。早稲田大学浜田研との共同研究で、難溶性RNAの結合タンパク質に関する共同研究も進んでいる。
FABS法により濃縮されたSam68 nuclear bodyに含まれるRNAの次世代シーケンス解析を行うことで、Sam68 nuclear bodyを構築するarchitectural RNAを同定したい。また、もしFABS法において、Venus-Sam68を指標にした1段階の濃縮では濃縮が不十分な場合は、内在のボディマーカータンパク質の染色を行うといった工夫を行うことで、2段階のFABSを行うといった改善法も考えている。
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Molecular Cell
巻: 70 ページ: 1038~1053
10.1016/j.molcel.2018.05.019