研究課題/領域番号 |
17K15085
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
天貝 佑太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90773896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ERp44 / 亜鉛 / タンパク質品質管理 / ゴルジ体 / 小胞体 |
研究実績の概要 |
ERp44結合タンパク質を網羅的に同定するために、免疫沈降法による結合タンパク質の精製を試みた。共沈降したタンパク質をSDS-PAGEによって分離し銀染色で観察したが、そのバンドパターンの再現性が低く、ERp44を含むタンパク質複合体は比較的不安定であることが疑われた。そこで、新たにビオチン付加酵素を融合したERp44発現プラスミド(BioID2-ERp44)を作製し、生細胞中でERp44の近傍タンパク質のビオチン化を行った。ビオチン化されたタンパク質をストレプトアビジンビーズによって回収し、質量分析によって網羅的に同定した。本解析によって、多くの結合タンパク質候補を同定することに成功した。いくつかの分泌タンパクが同定されたことで、ERp44の新たな生理機能の解明につながることが期待される。 また、亜鉛イオン制御分子ファミリーに着目し、siRNAによる一連の発現抑制実験を行い、細胞観察を行った。その結果、一つのサブファミリーの発現抑制でのみ、ERp44の細胞内局在が変化し、亜鉛イオンによる制御機構が破綻しているような表現型を得ることができた。この表現型は、siRNAによって分解されない遺伝子の過剰発現によってレスキューされたことから、この遺伝子が亜鉛を介したERp44の制御に重要な役割を担っていることが明らかとなった。 さらに、密度勾配遠心やサイズ排除クロマトグラフィーによって細胞抽出物分画の技法を身につけ、ERp44の細胞中におけるオルガネラ分布や複合体形成状態を生化学的に解析できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、免疫沈降によるERp44結合タンパク質同定はできなかったが、BioID2を用いたビオチン化修飾法による結合タンパク質探索を行うことができた。それぞれの基質候補タンパク質の詳細な解析が今後の課題である。 一方で、siRNAによる発現抑制実験により、ERp44を制御する亜鉛イオン制御因子を新たに同定することに成功した。 基質タンパク質の同定と新たな生理機能の解明については、計画よりも進展が悪いが、亜鉛イオンを介した新たなERp44制御因子を同定することができたため、総合しておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
同定された新規ERp44制御因子の解析に注力する。これまではHeLa細胞を用いて解析してきたが、この現象が普遍的なものであるか検証するために、他の細胞種でも同様に解析する。さらに、ERp44との結合や、活性変異体によるレスキュー実験などの解析を行い、ERp44制御の分子機構を解明する。本研究に特に注力し、論文をまとめて投稿したい。 今回同定された基質タンパク質候補については、その中でも特に興味深いと思われた成長因子タンパク質に着目する。ERp44発現抑制細胞で、この成長因子に由来したシグナル伝達に影響がないか、詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、基質候補タンパク質の抗体を多数購入する予定であったが、今年度は限られた数の抗体での解析しか進展できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度も引き続き、消耗品の購入、研究成果報告のための旅費、および研究成果の投稿料を計上する予定である。
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