• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

高浸透圧依存的非選択性カチオンチャネルの網羅的探索および同定

研究課題

研究課題/領域番号 17K15086
研究機関東京大学

研究代表者

渡邊 謙吾  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (20781727)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード高浸透圧ストレス / HICC
研究実績の概要

細胞の浸透圧ストレス応答機構の全貌解明は様々な疾患に対する創薬基盤・治療戦略開発の観点からも重要である.しかし,高浸透圧を認識するセンサー候補として高浸透圧依存的非選択性カチオンチャネル(HICC)の存在は古くから知られるものの,未だその分子実体が不明である.これまでに研究代表者は,ASK3というキナーゼが高浸透圧ストレスによって不活性化する際,HICCの活性化が必要なことを発見していた.また,高浸透圧ストレスによるASK3不活性化制御分子の同定を目的として,ASK3活性を指標としたゲノムワイドsiRNAスクリーニングを実施していた.そこで本研究では,HICCの活性化をASK3の不活性化で評価するという発想転換の下,HICCをゲノムワイドsiRNAスクリーニングによって網羅的に探索・同定することを目的としている.
本年度は,当初の計画通り,スクリーニングで得たASK3不活性化制御分子候補の中で膜貫通ドメインを有する11個の候補分子に対してCRISPR-Cas9システムによるノックアウト細胞を作製し,HICCであるか検証する方針で研究を開始した.しかし途中で,他のASK3不活性化制御分子のノックアウト細胞において,浸透圧応答シグナルに異常が見られる事実が明らかになった.これは細胞の樹立過程で細胞内浸透圧のセットポイントが変化してしまったためだと推察され,通常のノックアウト細胞で研究を進めていくことは不適切だという結論に至った.
そこで,HICCの電気生理学・薬理学的特徴よりTRPチャネルが有力視されてきた経緯を踏まえ,一次スクリーニングで陽性となっていたTRPチャネルを優先的に検証する計画に変更した.スクリーニング結果と一致して確かにASK3不活性化制御分子だと同定されつつあるTRPチャネルが現在までに得られてきており,今後HICCとしての可能性を詳細に検証していく.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

CRISPR-Cas9システムによる通常のノックアウト細胞では,浸透圧ストレスのセンシング機構を野生型と単純に比較できないことが判明し,研究計画の大幅な変更が必要になった.そのため,テトラサイクリン誘導性の欠損細胞など,代替となるアッセイ系の検討・確立に多くの時間を費やすことになった.
一方,既知の報告を利用して候補分子を絞るアプローチも同時並行で行ったところ,少なくともASK3不活性化の上流に位置するTRPチャネル候補を得ることには成功した.現在得ているTRPチャネルは高浸透圧ストレス応答における報告がなされておらず,本研究によって全く新しい知見を明らかにできる可能性は高い.
従って,当初の計画よりも進捗はやや遅れていると判断され,研究目的を達成するためには得られたTRPチャネルの解析を早急に進める必要がある.

今後の研究の推進方策

スクリーニング結果を基にASK3不活性化制御分子だと同定されつつあるTRPチャネルを優先して,HICCである可能性を検証していく.本年度,HICC同定を目的とした小規模なsiRNAスクリーニングが他グループより報告された.しかし,その報告では高浸透圧ストレス後の細胞体積回復を指標としてスクリーニングしており,提唱された分子が本当にHICCの分子実体であるか,さらなる検証が必要な状況にある.また,その報告では,本研究で現在得ているTRPチャネルがスクリーニングの陽性判断条件を満たしていなかったものの,弱陽性の結果であり,詳細な検証を進める価値があると言える.従って,HICCの活性化をASK3の不活性化で評価するという本研究の特徴を活かし,現在得ているTRPチャネルの解析を優先して推進させる.

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究方針に大きな変更を要したため,本年度に行う予定であった実験に係る実験試薬や実験器具などの消耗品購入を次年度に充当する.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] A PP6-ASK3 Module Coordinates the Bidirectional Cell Volume Regulation under Osmotic Stress2018

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Kengo、Umeda Tsuyoshi、Niwa Kuniyoshi、Naguro Isao、Ichijo Hidenori
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 22 ページ: 2809~2817

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2018.02.045

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The regulatory and signaling mechanisms of the ASK family2017

    • 著者名/発表者名
      Nishida Takuto、Hattori Kazuki、Watanabe Kengo
    • 雑誌名

      Advances in Biological Regulation

      巻: 66 ページ: 2~22

    • DOI

      10.1016/j.jbior.2017.05.004

    • 査読あり
  • [学会発表] PP6-ASK3 module is a key converter under bidirectional osmotic stress.2017

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, K., Naguro, I. and Ichijo, H.
    • 学会等名
      Consortium of Biological Sciences 2017 (ConBio2017)
  • [学会発表] NAMPT and RNF146 regulate the bidirectional cell volume regulator, ASK3.2017

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, K., Naguro, I. and Ichijo, H.
    • 学会等名
      FASEB Science Research Conferences: NAD+ Metabolism and Signaling
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi