研究実績の概要 |
本研究では、ドラッグターゲットとして有望な結核菌由来の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量発現系の構築を目的とした。平成30年度は昨年に引き続き、結核菌と同属で非病原生のMycobacterium smegmatisを蛋白質発現のホストとし、結核菌由来ctpF(基質不明のイオンポンプ)とmntH(Mn2+輸送体)の発現実験を行った。また、新たなターゲットして結核菌のエネルギー獲得に重要なndh2(II型NADH脱水素酵素)とmqo(リンゴ酸-キノン酸化還元酵素)の発現系構築も試みた。昨年度に導入したM. smegmatisにおけるT7システムを平成30年度も引き続き採用した。まずは昨年度に作製したN/C末端にアフィニティタグとしてHisタグあるいはStrepIIタグを付加したctpF, mntH発現用ベクター(計8種)を導入した形質転換株の発現チェックを行った。しかし、ウエスタンブロットで検出可能な発現量が得られなかったため、発現量の向上を目指し、融合蛋白質の付加を検討した。GFPあるいはSUMO(Small Ubiquitin-like Modifier)タグをctpF, mntH, ndh2, mqoそれぞれのN末端に付加した発現用プラスミドを作成し、M. smegmatisに導入した。表在性膜蛋白質であるndh2とmqoについてはどちらのタグを付加した場合もCBB染色で目的蛋白質由来のバンドを確認できた。GFPよりもSUMOタグを付加したときの方が、発現量は2~3倍高かった。ctpFとmntHについてはndh2, mqoと比べて発現量は低かったが、GFP由来の蛍光観察では発現が確認できた。今回発現を試みた4種の膜蛋白質に関しては将来的な構造解析に十分な発現量を得ることができた。
|