研究実績の概要 |
本研究の最終目的はシグナルペプチド非依存的な小胞体へのタンパク質輸送機構の解明である。真核生物において、分泌経路で輸送される可溶性タンパク質はそのN 末端にシグナルペプチドを有している。これまでシグナルペプチドは細胞質から小胞体への輸送に必須と考えられてきたが、研究代表者の出芽酵母遺伝子破壊株とシグナルペプチド削除型タンパク質を用いた研究により、シグナルペプチド非依存的な小胞体へのタンパク質輸送機構の存在が明らかになってきた。しかしながら、これまでの研究ではシグナルペプチドを削除した変異タンパク質を用いてきた。そこで、元々シグナルペプチドを有さないにも関わらず小胞体へ輸送されるタンパク質を発見することで、本輸送機構の詳細を明らかにすることを目的とした。平成29年度に行った研究から得られた成果を以下に示す。 IGOT(Nat. Biotechnol. 21, 667-672 (2003))法で、シグナルペプチドや膜貫通領域を持たないにも関わらずN 型糖鎖付加されている可能性のあるタンパク質を34 個発見していたので、クローニング及びウエスタンブロッティングにて、糖鎖付加の有無の確認を試みた。現在までに21個の遺伝子がクローニングできたので、ウエスタンブロッティングで調べた結果、少なくとも1個のタンパク質にN型糖鎖付加が見られた。この結果から、シグナルペプチド非依存的な小胞体へのタンパク質輸送は本来酵母に備わったものであると考えられる。
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