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2017 年度 実施状況報告書

新規C型糖転移酵素の探索と同定

研究課題

研究課題/領域番号 17K15094
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

丹羽 祐貴  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20756077)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードC-mannosylation / DPY19 / CRISPR/Cas9
研究実績の概要

タンパク質の糖鎖修飾の一種であるC型糖修飾(C-mannosylation)は、その機能の多くが未解明であったが、近年の研究によりタンパク質の分泌や細胞内輸送、酵素活性など様々なタンパク質機能に影響を及ぼすことが分かってきた。また我々の先行研究ではDPY19ファミリータンパク質の1つDPY19L3がC型糖修飾酵素であることを世界に先駆けて報告し、さらにはDPY19ファミリー以外のC型糖修飾酵素の存在を示唆した。そこで本研究では、DPY19ファミリー以外のC型糖修飾酵素が存在するか否かを詳細に検証し、新規C型糖修飾酵素を同定することを目的とした。
まず、新規C型糖修飾酵素をスクリーニングするための系を構築した。既にC型糖修飾がその分泌に重要であることが分かっているR-spondin1 (Rspo1)と、分泌型ルシフェラーゼ(Gluc)の融合タンパク質(Rspo1-Gluc)を過剰発現する細胞を樹立し、Rspo1-Glucの分泌がC型糖修飾により制御されるか否かを評価した。その結果、C型糖修飾の阻害によりRspo1-Glucの分泌は抑制されたことから、1次スクリーニング系を確立した。また、2次スクリーニング系であるC型糖修飾の有無をSDS-PAGEにより分離する手法は既に確立済みであり、これにより新規C型糖修飾酵素のスクリーニング系が構築できた。
一方で我々が用いた手法とは異なるCRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウトにより、マウスDPY19L1及びDPY19L3がC型糖修飾酵素活性を有することが報告されたことから、新規C型糖修飾酵素が存在するか否かを詳細に検証する必要性が生じた。そこで我々もCRISPR/Cas9を用いてDPY19ファミリーをノックアウトし、検証を行うこととした。現在これらのノックアウト細胞を樹立中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画では、新規C型糖修飾酵素の探索のための1次及び2次スクリーニング系が構築でき次第、siRNAライブラリを用いたスクリーニングを開始する予定であった。しかし、系を構築している最中に他の研究グループより、我々の用いた手法とは別の手法であるCRISPR/Cas9を用いた方法で、マウスDPY19L1とDPY19L3がC型糖修飾酵素活性を有することが報告された。この報告から、我々が探索を試みているC型糖修飾酵素は新規ではなく、DPY19L1あるいは他のDPY19ファミリーである可能性が浮上した。これは本研究計画の根幹に関わる部分であり、我々も検証する必要があると考えた。そこで先行研究と同様の手法であるCRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウトにより再検証を行うこととした。現在、DPY19ファミリーをそれぞれノックアウトした細胞株の樹立を行っている。
当初計画のRspo1に対する新規C型糖修飾酵素は上記のように存在しない可能性が浮上した一方で、別の実験結果から他の複数のC型糖修飾タンパク質でやはりDPY19ファミリー以外の新規C型糖修飾酵素が作用している可能性が強く示唆されている。以上のことから、当初の目的通り新規C型糖修飾酵素は存在しその探索は可能であると考えられるため、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

現在までに新規C型糖修飾酵素の探索のためのスクリーニング系は構築できているものの、探索を行おうと考えている酵素が新規ではない可能性が生じてきたため、まずはその検証を行う必要があると考えている。現在、先行研究と同様の手法であるCRISPR/Cas9によるDPY19ファミリーのノックアウト細胞を樹立しているため、その樹立が出来次第、その培養上清よりRspo1を精製し、質量分析によりC型糖修飾の有無を解析することで、Rspo1に対する新規C型糖修飾酵素が存在するか否かを検証する。
一方でRspo1に対する新規C型糖修飾酵素が存在しない可能性を鑑み、DPY19ファミリー以外の新規C型糖修飾酵素が作用していると示唆されている他のC型糖修飾タンパク質でも解析を進める。まず、これらタンパク質でも上記と同様にCRISPR/Cas9を用いた方法でDPY19の可能性について検証する。この検証と同時に、これらC型糖修飾タンパク質のC型糖修飾の機能を検証し、スクリーニングに用いることのできる表現型を探索する。これらの検証を行うことで、新規C型糖修飾酵素が作用しており、最もスクリーニングに用いやすいC型糖修飾の機能を有するタンパク質を選定する。最後に、選定したタンパク質をスクリーニングへと応用する系を考案し構築後、その系が確かにC型糖修飾の有無を判別可能か否かを検証する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)

  • [雑誌論文] Topological analysis of DPY19L3, a human C-mannosyltransferase2018

    • 著者名/発表者名
      Niwa Yuki、Nakano Yoshihiko、Suzuki Takehiro、Yamagishi Mizuo、Otani Kei、Dohmae Naoshi、Simizu Siro
    • 雑誌名

      The FEBS Journal

      巻: 285 ページ: 1162~1174

    • DOI

      10.1111/febs.14398

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulation of granulocyte colony-stimulating factor receptor-mediated granulocytic differentiation by C -mannosylation2018

    • 著者名/発表者名
      Otani Kei、Niwa Yuki、Suzuki Takehiro、Sato Natsumi、Sasazawa Yukiko、Dohmae Naoshi、Simizu Siro
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 498 ページ: 466~472

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.02.210

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dpy-19 like 3-mediated C-mannosylation and expression levels of RPE-spondin in human tumor cell lines2017

    • 著者名/発表者名
      Morishita Shohei、Suzuki Takehiro、Niwa Yuki、Dohmae Naoshi、Simizu Siro
    • 雑誌名

      Oncology Letters

      巻: 14 ページ: 2537~2544

    • DOI

      10.3892/ol.2017.6465

    • 査読あり
  • [学会発表] Glucosyl-galactosyl-hydroxylation of CCN1regulates its secretion2018

    • 著者名/発表者名
      Yudai Ishizawa, Yuki Niwa, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Siro Simizu
    • 学会等名
      International Symposium on ER stress, glycosylation, homeostasis, and diseases
    • 国際学会
  • [学会発表] C型糖修飾酵素DPY19L3のトポロジー解析と活性点の探索2017

    • 著者名/発表者名
      丹羽祐貴、中野圭彦、鈴木健裕、山岸瑞生、大谷慧、堂前直、清水史郎
    • 学会等名
      第36回日本糖質学会年会
  • [学会発表] メラノソーム関連タンパク質PMELにおけるC-mannosylationの解析2017

    • 著者名/発表者名
      小松良亮、丹羽祐貴、鈴木健裕、清水映輪奈、堂前直、清水史郎
    • 学会等名
      第36回日本糖質学会年会
  • [学会発表] がん細胞の血管擬態形成におけるintegrin beta1の役割解析2017

    • 著者名/発表者名
      川原遼太、丹羽祐貴、清水史郎
    • 学会等名
      第26回日本がん転移学会学術集会・総会
  • [学会発表] Identification of membrane topology of human DPY19L3 reveals that C-terminal region is essential for C-mannosyltransferase activity2017

    • 著者名/発表者名
      Yuki Niwa, Yoshihiko Nakano, Takehiro Suzuki, Mizuo Yamagishi, Kei Otani, Naoshi Dohmae, Siro Simizu
    • 学会等名
      24th International Symposium on Glycoconjugates
    • 国際学会
  • [学会発表] Premelanosome Protein (PMEL) is C-Mannosylated at W104, W153 and W1562017

    • 著者名/発表者名
      Ryosuke Komatsu, Takehiro Suzuki, Yuki Niwa, Erina Shimizu, Naoshi Dohmae, Siro Simizu
    • 学会等名
      24th International Symposium on Glycoconjugates
    • 国際学会
  • [学会発表] 顆粒球コロニー刺激因子受容体のC型糖修飾はその機能に重要である2017

    • 著者名/発表者名
      丹羽祐貴、清水史郎
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] ヒトがん細胞における血管擬態はintegrin beta1依存的である2017

    • 著者名/発表者名
      川原遼太、丹羽祐貴、清水史郎
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Integrin β1 plays a crucial role on vasculogenic mimicry formation2017

    • 著者名/発表者名
      Ryota Kawahara, Yuki Niwa, Siro Simizu
    • 学会等名
      AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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