研究課題/領域番号 |
17K15102
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
新谷 正嶺 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (40650536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンピュテーショナルフォトグラフィ / 心臓イメージング / ロボット顕微鏡システム / 符号化撮像 / 画像解析 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
光学顕微鏡は、静的で平面的な、培養細胞などの観察が得意である一方で、動的で立体的な、拍動する心臓などの観察を苦手とする。本研究課題は、この後者の動的で立体的な心臓などの観察対象を顕微観察可能にする技術開発の挑戦を行うものである。申請時の具体的な計画として、光学顕微鏡システムに、カメラで撮像した像を最終的な像ではなく解析処理を行なうための中間像とするコンピュテーショナルフォトグラフィの方法を導入し、本来苦手であるはずの拍動する心臓の高分解能イメージングを実現する方法を提案した。 この手法においては、現在、電圧でピントを制御できる液体レンズを組み込んだ光学顕微鏡で、高速に光学系内の液体レンズの焦点距離を変化させる方法で撮像を行い、その後、デコンボリューション処理によって、系統的ボケを除去する方法が、焦点深度(観察平面と垂直な方向の観察可能領域)を最も深く広げられている。液体レンズの駆動には、モーターなどの駆動部位の不在のため、機械的振動ノイズが非常に少なく、ピント調整速度も、1msで一往復のピント調整も出来るため、心臓の動きを追うのに十分な性能を発揮している。 本年度は、上記の手法の開発を進めると共に、新たな別アプローチの顕微観察手法の開発にも成功した。走査型電子顕微鏡は、同じ倍率の光学顕微鏡の数十倍の焦点深度を持つ。不揮発性の液体を用いた工夫で、この走査型電子顕微鏡で心臓を拍動させるDapniaのライブイメージングを実現させた。この成果も、「動的で立体的な」観察対象の顕微観察を実現させる新規の技術開発の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
動的で立体的な、拍動する心臓などの顕微観察を可能にするための研究手法に関して、二種類の方法を実現させた。内一つは、液体レンズを用いた、撮像後に画像処理を施すことをセットにして深い焦点深度の観察を可能にする、コンピュテーショナルフォトグラフィのコンセプトに基づく観察手法である。この手法の研究開発が順調に進んでおり、さらに、この手法とは別の、走査型電子顕微鏡によるライブイメージングを可能にすることによって、動的で立体的な試料の観察を可能にする方法の開発にも成功している。二種類の方法の利点と欠点を比較することも可能であるため、従来の計画以上に、網羅的に「動的で立体的な、拍動する心臓などの顕微観察を可能にするための研究手法の新規開発」に挑戦することになっている。計画通りの研究開発も順調に進み、利点と欠点が大きく異なる別の新規計測手法の開発にも成功したため、研究の進歩状況は当初の計画以上に進展した、好調な状態であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で開発した上記の2種類の手法それぞれで、動的な心臓の顕微観察を見事実現させられるか否か、これに挑戦する。 単純な適応で、うまく計測を実現させることが出来ない場合、計測を阻害する問題点を一つ一つ見出して、解決していく。ここでは、技術の新規性喪失の可能性を考慮し、失敗やその原因の細かく具体的な予想は記載しない。
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