研究課題/領域番号 |
17K15103
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
山田 大智 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90793191)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 祖先配列 / 構造機能相関 / 古環境 / バイオインフォマティクス / 赤外分光法 / 生物物理 / 光回復酵素 / クリプトクロム |
研究実績の概要 |
本研究では、データベースと機能測定実験を組み合わせることで、遺伝子修復、光線センサーや概日リズムの一部を担う機能をもち、同じ共通祖先由来にもかかわらず異なる機能をもつタンパク質群である光回復酵素/クリプトクロムファミリーの分子進化から機能発現機構を明らかにする。さらに、本研究から古環境の推定と発展させた研究として新規機能性タンパク質の創成を目指す。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。
1.計算により祖先配列を再現し、実際にタンパク質として発現する方法を試みた。先ず、光回復酵素/クリプトクロムファミリーの祖先配列の推定を行った。その結果、共通祖先はCPDを修復するCPD光回復酵素に近いことが示唆された。次に、推定した祖先配列を遺伝子合成し、その配列のタンパク発現を試みたところ、大腸菌による共通祖先配列の発現が上手く行かなかった。この原因として推定された祖先配列の長さやアミン酸の存在比率が、既存のものと大きく異なっていることが考えられる。また、大腸菌系での培養に適していない可能性があり、計算方法や培養法に関して、今後検討していく。
2. 光回復酵素とクリプトクロムに関して、それぞれの機能が何故生み出されるのかに関しても明確な答えは出ていない。そこで、(6-4)光回復酵素について、修復能をもつ分子機構を機能活性測定と東大との共同研究の分子動力学計算により調べた。その結果、配列の保存性と分子動力学計算から活性サイト近傍にあるLys残基が重要であることを示唆する結果を得た。この内容は昨年論文にまとめている。さらに、赤外分光法を用いた機能活性測定により、このLys残基活性サイトのHis残基の位置をコントロールすることで、修復機能をコントロールしていることを見出した。この研究結果は現在論文にまとめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光回復酵素/クリプトクロムファミリーの内、(6-4)光回復酵素の研究において、機能発現機構につながるLys残基の役割に関する研究結果を得ることができた。さらに、このLys残基の位置のアミノ酸は、光回復酵素/クリプトクロムファミリーで機能が異なるタンパク質間では保存性が低いことから、機能を別ける分子機構のおいて重要なアミノ酸部位の可能性があり、今後の研究の発展につながる結果となっている。また、当初の目標であったデータベースを用いた光回復酵素/クリプトクロムファミリーの祖先配列の推定を行う事に成功し、推定した配列の発現の試みも行うことができた。これらの結果から、分子進化と機能発現機構を明らかにする当研究が、順調に進んでいることが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、光回復酵素/クリプトクロムファミリーの祖先配列の推定を行う事に成功したが、タンパク質発現はまだ上手くいていない。そこで、大腸菌の発現系だけではなく、酵母や動物細胞をもちいた発現を試みる。また、祖先配列推定プログラムに関しても、見直しを行っていく。さらに、平成30年度は、機能が異なる配列群または同じ機能をもつ配列群と各機能の分岐点の配列と比較し、保存性の高い配列または異なる配列から、それぞれの機能に重要な配列情報を抽出する。そのアミノ酸部位が本当に機能に重要なのか、その機能をもつ配列ともたない配列それぞれに変異導入し、機能測定することで確認する事でも、光回復酵素/クリプトクロムファミリーの機能発現機構を明らかにしていく。
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