本研究では、データベースと機能測定実験を組み合わせることで、遺伝子修復、光線センサーや概日リズムの一部を担う機能をもち、同じ共通祖先由来にもかかわらず異なる機能をもつタンパク質群である光回復酵素/クリプトクロムファミリーの分子進化から機能発現機構を明らかにする。また、これらの技術を利用して、他のタンパク質への応用も行う。本研究成果の概要を以下に記述する。 1.光回復酵素/クリプトクロムファミリーの祖先配列の推定を行った。その結果、共通祖先はCPDを修復するCPD光回復酵素に近いことが示唆された。次に、推定した祖先配列を遺伝子合成し、大腸菌による共通祖先配列の発現を試みたが上手く行かなかった。この原因として推定された祖先配列の長さやアミン酸の存在比率が、既存のものと大きく異なっていることが考えられる。 2.光回復酵素の機能が何故生み出されるのか明確な答えは出ていない。そこで、(6-4)光回復酵素について、修復能をもつ分子機構を機能活性測定と東大との共同研究の分子動力学計算により調べた。その結果、活性サイト近傍にあるLys残基が重要であることを見出した。この内容は現在論文にまとめている。 3.大量の配列を比較計算する技術を駆使して、ロドプシン様タンパク質の解析を行った。ロドプシンは発色団レチナールを結合するために、タンパク質内部に保存性の高いLys残基を持っている。しかし、配列はロドプシンと相同性を示すが、このLys残基を保存していない配列も多く見つかっている。今回のこのLys残基を持たないロドプシン様タンパク質に、Lys残基とカウンターイオンになるAsp残基を導入することで、プロトンポンプ機能を復活させることに成功し、進化の面で新たな知見を得ることができた。
|