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2019 年度 実施状況報告書

がん遺伝子産物Rasの動的な構造特性を介した機能発現メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15106
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

松本 篤幸  国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 研究員 (00753906)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードRas / state transition / がん変異体 / 分子動力学シミュレーション / X線結晶構造解析
研究実績の概要

1. 野生型H-Ras並びに2種類のがん変異体(H-RasQ61H, H-RasQ61L)の不活性型State 1及び活性型State 2構造について5つの初速度で200 nsecの分子動力学(MD)計算を行った(計1マイクロ秒)。Q61H変異体State 1のSwitch II領域は結晶構造中でディスオーダーしていたので、野生型並びにQ61Lの原子座標に基づいて2種類モデリングし、それぞれについて計算を実施した。計算用エンジンとしてはGROMACS2016を用いた。
2.Q61H変異体のState 1のSwitch II構造に関して、野生型及びQ61L変異体と比較して特に高い運動性を示すことが明らかになった。Switch II領域の主成分分析を行った結果、Q61L変異体とQ61H変異体は類似の立体構造分布を示すこと、またその分布は野生型とは異なることが明らかになった。
3.State 1のSwitch IIのMD構造群を既知State 2構造と比較した結果、Q61変異体のSwitch II領域はState 2と良く似た構造を持つことが明らかになった。このことはQ61変異体のState 1構造は野生型と比較して容易に活性型State 2へと移行する可能性を示唆している。
4.Q61H及びQ61L変異体では、野生型において水素結合に占有されているAsp38が多様な構造を取ることで下流のシグナル伝達分子と比較的容易に相互作用可能な状態で存在することが示唆された。上記3.で得られた知見と総合すると、Q61変異体のState 1は活性型になりやすい立体構造状態として存在することでそのがん化活性を亢進している可能性がある。
5.国際学会(第64回Biophysical society annual meeting)にてここまでの研究成果を公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究で計画していた、Q61変異体のState 1立体構造に基づいた活性化メカニズムの解明についてはほぼ計画通りに完了しており、国際学会を通じて世界中にその成果を公表した。一方、学術論文を通じた成果公表については現在進行中であり、この点において当初計画より少し進行が遅れていると判断される。

今後の研究の推進方策

ここまでの研究によって得られたQ61変異体に特有の構造的特徴に基づき、Q61変異によってもたらされるがんに対する治療戦略を提示する。さらにそれらについてまとめた論文を学術雑誌に投稿することで、社会に広く研究成果を発信する。

次年度使用額が生じた理由

2019年度に予定していた論文投稿に関わる費用が圧縮されたため、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Novel insights into the structural perturbation induced by the oncogenic mutations, Q61L and Q61H, in Ras state 12020

    • 著者名/発表者名
      Shigeyuki Matsumoto
    • 学会等名
      64th Annual Meeting of the Biophysical Society
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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