研究実績の概要 |
1.2種類のH-Ras変異体(H-RasQ61H, H-RasQ61L)の不活性型State 1のX線結晶構造について、一部の原子モデルの修正を実施した。 2.修正後の原子モデルに基づき、GROMACS2016を用いて5つの初速度で200 nsecの分子動力学(MD)計算のやり直し行った(計1マイクロ秒)。Switch IIがディスオーダーしているQ61H変異体のSwitch II領域については、前年度実施したMD計算と同様に野生型並びにQ61Lの原子座標に基づいて2種類モデリングし、それぞれについて計算と解析を実施した。 3.修正後のMD計算結果で観察されるSwitch I領域及びSwitch II領域の構造的特徴について、前年度に実施したMD計算の結果と概ね一致することを確認した。具体的には両変異体におけるSwitch IのN末端領域の運動性の上昇、Q61H変異体に特徴的にみられるSwitch II領域の運動性の上昇、Q61L変異体のSwitch II領域がstate 2-likeな構造状態を取ることの3点である。一方、Q61H変異体のSwitch II領域の構造分布については初期構造依存性が比較的強く見られることが明らかになり、積極的な議論から除外することにした。 4.修正後のX線結晶構造並びにMD計算結果に基づいて論文を作成した。本論文について、2021年5月時点で学術雑誌に投稿中である 。 5.本研究課題と関連して実施したタンパク質の運動性解析に関わる論文を2報公開した(Matsumoto, S., et al., Biophysical Journal, 119(3), 628 - 637; Matsumoto, S., et al., Nature Machine Intelligence, 3(2), 153 - 160)。
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