研究課題/領域番号 |
17K15110
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
古田 茜 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 協力研究員 (10772337)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キネシン / 微小管 / 分子モーター |
研究実績の概要 |
本研究では,既存の分子モーターの部品をランダムに組み合わせたものから,新たに分子モーターを創るという手法を採り,多数の構造と機能の対応関係から,一方向性運動を生み出すための要件を帰納的に抽出することを目的とする.このために,生物分子モーターの中でも,ATP加水分解部位を1つしかもたない,単純な構造をもつキネシンに着目し,実験を行った.キネシンは,微小管上をそのプラス端に向かって一方向に運動する分子モーターで,小胞輸送や細胞分裂をはじめとして,生体内で多様な役割を担っている.まず,キネシンを,「モーター部位」と「ネック」の2つのモジュールに分け,円順列変異法という技術を用いてモーター部位のランダムな位置にネックが結合した新規分子モーター群を作製した.計40種類からなる新規分子モーター群の中から既存の運動測定法を用いて,微小管上を運動する活性を持つものをスクリーニングしたところ,元のキネシンとは運動方向性が逆転し,マイナス端方向性を示すモーターを得ることができた.得られた新しいキネシンは,元のキネシンと全く同じ構造をもつモジュールで構成されていながら,モジュール間のつなぎ方を変えただけで本来の運動方向性が逆転しており,これらを用いることで,運動方向性と分子構造との関係を真正面から調べることができるはずである.現在,運動方向と微小管結合との間の関係を知るための力学測定を計画しており,2018年度中には測定を始める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,新しい分子モーターを「つくる」ことで,運動方向が決められるメカニズムを理解することを目的としている.大前提となる「新しいモーターをつくる」ことについては,計画通りに新たなキネシン(キネシンと同じモジュール構成でありながら,運動方向性が逆転するキネシン)をつくることに成功しているので,一定の成果を得たと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
運動方向性と分子構造の関係を調べるために,元のキネシン(プラス端方向性)と新しく創ったキネシン(マイナス端方向性)の2つについて,それらの運動方向と,外部負荷が掛かった時の微小管への結合のしやすさ,微小管からの解離のしやすさとの関係を実測して比較する.具体的には,結合しやすい方向と,解離しやすい方向のそれぞれを,金粒子を用いたナノメートル計測と,光ピンセットによる力学計測によって定量する予定である. また,現在までに得られた新しいキネシンは1種類のみであるが,今後,ランダムな円順列変異を一挙に数多く導入する方法を開発することによって新規モーターのバリエーションを増やす予定である.こから得られた複数の新規キネシンに関して,運動方向性と分子構造の関係を調べることで,運動方向性を決めるメカニズムを帰納的に明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究計画通り新しい分子モーターの創出には成功したが,これらの解析をするための装置の構築に,より多く予算が掛かることが予想されたため,今年度の支出を最低限に抑えた. (使用計画)解析装置のための光学部品にあて,当初の予定通り研究計画を遂行する.
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