研究課題
運動性繊毛は、多くの真核生物細胞上で観察されるアンテナ状の細胞小器官である。運動性繊毛の波状運動は、繊毛内部微小管上に存在する「繊毛ダイニン」と呼ばれる巨大モータータンパク質複合体によって駆動される。繊毛ダイニンは数種類の分子種からなり、そのいずれもが繊毛内へと運び込まれる前に細胞質内において各種サブユニット(重鎖/中間鎖/軽鎖)から組み立てられる。本機構は「前集合/pre-assembly」と呼ばれ、繊毛ダイニン前集合の異常は様々な人体疾患を引き起こすことが報告されている。しかしながら、繊毛ダイニン前集合に関与する因子群や詳細な分子基盤には不明な点が多い。本研究では、2本の運動性繊毛を持つ単細胞緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)を用い、「MOT48」及び「TWI1」と呼ばれる2種類の前集合因子を各々欠損する変異株解析を通して、繊毛ダイニン前集合機構の分子基盤の一端の解明を目指した。MOT48及びTWI1は高等動物にまで広く保存されたシャペロン共因子様タンパク質であり、本研究によってクラミドモナス細胞質内においてこれらの因子がどの繊毛ダイニン分子種の前集合機構に関与するのかが明らかになった。また、MOT48とTWI1の前集合機構における役割には冗長性と補完性が存在し、繊毛ダイニン前集合の分子経路は以前考えられていたよりも遥かに複雑である可能性が本研究より示唆された。以上の結果を学術論文として海外の学術誌に発表した。
前集合機構の分子基盤解明の試みに伴い、繊毛ダイニン構成部品の探索の過程で、特定種の繊毛ダイニン(内腕ダイニン種f/I1)のモーター部に結合する新規軽鎖(DYBLUP/MOT7)を同定した。当該分子は、興味深いことに光感受性ドメイン(BLUF:sensors of blue-light using FAD)を有しており、光により繊毛ダイニンの活性が制御される可能性が示唆された。
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Science Advances
巻: 7 ページ: eabf3621
10.1126/sciadv.abf3621
PLOS Genetics
巻: 16 ページ: e1009126
10.1371/journal.pgen.1009126
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210302_2