研究課題/領域番号 |
17K15118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 佐知子 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD) (40771879)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Rhoファミリー活性化因子 / メカノセンシング / 細胞骨格 / 細胞-基質間接着 / 細胞収縮力 / 上皮細胞 |
研究実績の概要 |
力学的環境に対する細胞や組織の応答(メカノセンシング)の重要性が、様々な生理機能で注目されている。本研究は機械的力の受容と伝達にRhoファミリー活性化因子(Rho-GEF)の一つであるSoloがどのように関与するのか、その分子機構を明らかにし、メカノセンシングの新たな制御機構や役割を解明することを目的とする。本年度は特にSolo結合タンパク質の探索と、細胞-基質間接着部位での張力発生に対する関与の解明に重点を置いて研究を実施し、以下の成果を得た。 1. Soloの結合タンパク質の探索 私は前年度までに、Soloの発現抑制が細胞間および細胞-基質間接着部位におけるケラチン繊維の繋ぎとめを減弱させることを見出していた。ケラチン線維は細胞間接着ではデスモソーム、細胞-基質間ではヘミデスモソームと呼ばれる接着複合体により細胞膜に繋ぎとめられている。そこで私はSoloがデスモソームやヘミデスモソームを構成するタンパク質と結合する可能性を考え、Soloとそれらのタンパク質の結合を生化学的手法で検証した。その結果、アドヘレンスジャンクション構成タンパク質、デスモソーム構成タンパク質、ヘミデスモソーム構成タンパク質をSolo結合タンパク質候補として新たに見出した。 2. 細胞-基質間接着部位での張力発生に対するSoloの関与 細胞には常に周囲の力学的環境に応じた張力がかかり、それに見合う収縮力が細胞に発生している。収縮力の時空間的に適切な発生は力学的環境への適応に必須であり、正常な細胞機能に不可欠である。上皮細胞が細胞-基質間接着部位に発生する力の部位をシリコーン基盤を利用した手法で可視化し、Soloとの局在を生細胞のライブイメージングで詳細に検証した結果、力の発生部位とSoloの局在に相関があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は機械的力の受容と伝達にRhoファミリー活性化因子(Rho-GEF)の一つであるSoloがどのように関与するのか、その分子機構を明らかにし、メカノセンシングの新たな制御機構や役割を解明することを目的とする。本年度は特にSolo結合タンパク質の探索と、細胞-基質間接着部位での張力発生に対する関与の解明に重点を置いて研究を実施し、メカノセンシングに対するSoloの関与について、分子機構と細胞機能の両面から解明に取り組んだ。分子機構については、Solo結合タンパク質として細胞間および細胞-基質間接着複合体の構成タンパク質の同定に成功した。細胞の接着部位は特に力が発生し、メカノセンシングに重要な部位と言われている。Soloがこれら細胞接着部位において、接着部位の構成タンパク質と相互作用することでメカノセンシングに関与する可能性を示唆する結果が得られた。また細胞レベルでは、細胞-基質間接着面における収縮力発生部位と蛍光タンパク質の同時観察の条件検討と最適化に取り組んだ結果、Soloが細胞-基質間接着面の収縮力発生部位に多く局在することを明らかにした。これらの成果は本年度4件の国内学会で報告するとともに、国際誌に投稿し受理、掲載された。以上から、おおむね順調に研究が進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は機械的力の受容と伝達にRhoファミリー活性化因子(Rho-GEF)の一つであるSoloがどのように関与するのか、その分子機構をタンパク質レベルおよび細胞レベルで明らかにし、メカノセンシングの新たな制御機構や役割を解明することを目的とする。私は前年度までにSoloがケラチン繊維と結合すること、またSoloとケラチン繊維の結合が細胞のメカノセンシングに関わる可能性を示唆する結果を得ている。そこで今後はケラチン繊維との結合しない変異体をアミノ酸配列のデータベース解析および分子生物学的手法を用いて作製し、局在や活性、またメカノセンシングに対する影響があるかを検証する。H29年度に見出した新たなSoloの結合タンパク質との結合についても結合部位の決定など詳細な解析を実施するとともに、Solo結合タンパク質の局在や機能に対するSoloの関与も合わせて検証する。これらのSoloとSolo結合タンパク質の解析、またケラチン繊維と結合しないSolo変異体の機能解析により、メカノセンシングに対するSoloの関与について相乗的な理解を目指す。細胞のメカノセンシング機能の評価は、シリコーン基盤を利用した手法(所属する研究室の独自技術)で実施する。H29年度に力の発生部位と発現させた蛍光タンパク質の同時観察の最適化を実施したため、今後リアルタイムでの詳細な評価が可能である。本技術を用いて、上皮細胞の力の発生に対するSoloとケラチンの結合の意義を検証する。さらに上皮細胞の力刺激依存的なアクチン骨格の再構築をタイムラプス観察で検出する手法を用いて、Soloとケラチンの結合が力学的刺激に応じたアクチン骨格の再構築に影響するかを検証する。これらの解析により、細胞のメカノセンシングによる細胞骨格の再構築に対するSoloの関与の総合的な理解を目指す。
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