前年度までに、PS脱炭酸酵素Psd1依存的PE合成経路に関与する小胞体膜タンパク質Ice2を同定しており、その機能解析を行なってきた。前年度は、Ice2がミトコンドリア局在型Psd1ではなく、近年その存在が明らかとなったER局在型Psd1によるPE合成を減少させることを見出している。 本年はこのER局在型Psd1の性状解析および、これとIce2の関連について解析した。その結果、(1)Ice2の欠損は、ER局在型Psd1の量を低下させる。(2)ER局在型Psd1をプラスミドによってIce2欠損酵母に発現し、その量を補正すると、Ice2欠損酵母におけるPE合成が回復した。(3)ER局在型Psd1は、酵母にERストレスを与えたり、培地中にPEの原料となるエタノールアミンを添加することでその量が減少する。ことなどを見出した。これらのことより、ER局在型Psd1は、ERストレスや、細胞内PE量に応じてその量が制御されており、Ice2の欠損はこの制御機構の破綻を引き起こすのではないかと考えられる。 また、前年度までにミトコンドリア外膜タンパク質Porinがミトコンドリア内リン脂質合成に重要な機能を有することを見出していた。本年度は、さらに(1)Porinの膜間部領域への変異でミトコンドリアにおけるPE合成が上昇する。(2)このPE合成の上昇は、PEの前駆体リン脂質であるPSの輸送因子Ups2-Mdm35依存的である。(3)このPE合成を上昇させるPorin変異体を発現させるとUps2量が増加する。ことなどを見出した。これらのことより、PorinはUps2-Mdm35を介したミトコンドリア内PE合成を制御していると考えられる。
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