研究実績の概要 |
ゴルジ体ストレス応答とは、ゴルジ体の処理能力を超える事態に対して、能力を増強することで恒常性を維持する、細胞の生命活動に必須の適応機構である。本研究では、ゴルジ体でO型糖鎖修飾されるプロテオグリカンに焦点を当て、O型糖鎖修飾の能力を増強させるストレス応答機構を解明することを目的とし、以下の実験を行った。 プロテオグリカンの糖鎖修飾阻害剤xylosideで処理したHeLa細胞のマイクロアレイ及び次世代シークエンサー解析を行ったところ、複数のプロテオグリカンO型糖鎖修飾酵素遺伝子 (CSGALNACT2, GLCE, HS6ST1, HS3ST1, NDST2, B3GAT3) の発現上昇がみられた。また、これらの遺伝子はプロテオグリカンのコアタンパク質の過剰発現によっても発現が上昇した。さらに、これらの遺伝子の発現は既知のゴルジ体ストレス応答経路(TFE3, HSP47, CREB3経路)非依存的に制御されることが判明した。 それぞれの遺伝子の転写開始点から上流1 kbp以内の領域をレポーターであるルシフェラーゼ遺伝子につなぎ、それらの欠損・置換変異コンストラクトを導入したHeLa細胞でルシフェラーゼアッセイを行い、プロモーターを解析した。その結果、GLCE, HS6ST1, NDST2, B3GAT3において転写制御に重要なエンハンサー配列を同定し、GCリッチな共通配列が含まれていたことから、この配列をproteoglycan stress response element (PGSE) とした。これらの結果から、ゴルジ体ストレス応答の新規転写制御配列を明らかにすることができた。
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