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上皮組織が正しい形態に成長するためには、細胞配置換えの方向や速度が精緻に制御される必要がある。細胞配置換えの速度は上皮組織により10倍も異なるにも 関わらず、その制御機構はほとんど研究されてこなかった。本研究では、「力」と「変形」をつなぐ「機械物性」を調べることで、細胞配置換えの速度と方向を決定する分子・力学メカニズムを解明することを目指す。
本研究ではこれまでに、画像データからCell Vertex Model (CVM) のモデル（構成式）とパラメータを包括的に推定する手法を構築し、パーフェクトモデル実験により、要約統計量を用いた従来手法と比較して推論の精度が格段に向上することを確認していた。
2019年度はまず、赤池情報量規準によるモデル選択を実装し、パーフェクトモデル実験で動作を確認した上で、ショウジョウバエ上皮組織に適用した。その結果、全てのデータで、CVMの典型的なモデルではなく、細胞接着面張力が辺長に負に依存する負のバネ弾性モデルが選択されることがわかった。次に、誤差共分散行列やモンテカルロ法を用いた誤差解析により、ショウジョウバエ上皮組織データにおけるパラメータ推定値が妥当なレベルの信頼度を持つことを確認した。以上から開発手法の有用性が示されたので、開発手法を用いて、ショウジョウバエ上皮組織における機械物性と細胞配置換えの関係を解析した。モデル選択とパラメータ推定の結果は、細胞接合部の負のバネ定数の異方性が細胞配置換えにおける細胞接着面収縮の速度と方向を支配することを示唆していた。現在、この仮説を検証するためのCVMの数値計算に取り組んでいる。
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