研究課題/領域番号 |
17K15128
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 貴子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10778038)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 受精 / 膜融合 / 精子 / 卵子 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
精子と卵子がどのようにしてお互いを認識し融合し始めるのか、現段階ではその仕組みのほんの一端しか解明されいない。哺乳類の受精では、精子と卵子の膜融合が精子細胞膜上のIZUMO1と卵子細胞膜上のJUNOの相互作用を介して引き起こされている。本研究ではIZUMO1とJUNOを足がかりに、配偶子間融合の作用機構を分子レベルで解き明かすことを目的にしている。 前年度の成果から、Izumo1遺伝子が選択的スプライシングによってIZUMO1_v1とIZUMO1_v2の二つのアイソフォームを産生していることを見出した。さらに、Izumo1_v2のmRNAレベルでの発現量が非常に低いこと、成熟タンパク質の配列はIZUMO1_v1と同じであることが明らかになった。精子上に存在するIZUMO1は受精に必要不可欠であり、IZUMO1タンパク質の量が受精の成功率を左右することが予想された。そこで今年度は、発現量の低いIZUMO1_v2を利用してマウス生体内におけるIZUMO1タンパク質の量を制御することに取り組み、IZUMO1の量が受精に及ぼす影響を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作製したIZUMO1_v1ノックアウトマウスは、IZUMO1_v1を特異的にノックアウトしているためIZUMO1_v2のみを産出する。このIZUMO1_v1ノックアウトマウスと、IZUMO1ノックアウトマウスとを交配させることで段階的にIZUMO1タンパク質の量を減少させることに成功し、そのオス個体の妊孕性を遺伝子型ごとに評価した。その結果、精子上のIZUMO1タンパク質の量が減少すると受精の成功率も低下し、産仔数もIZUMO1タンパク質量依存的に減少することが明らかになった。 受精に必須であるIZUMO1タンパク質は、精子の形態・運動性に影響を及ぼさないため、一般的に用いられている精子機能分析法ではIZUMO1タンパク質の異常による不妊を見抜けることができない。我々の結果から、IZUMO1タンパク質を指標として精子の機能の「質」を評価することが可能であり、生殖補助医療の成功率を上昇させる可能性も示唆さた。これらの成果をInt J Mol Sci.誌に発表し、日本動物学会第90大会において口頭発表を、Gordon Research Conferences及び第42回日本分子生物学会にてポスター発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画通り、IZUMO1-JUNO制御系の機構解明に向けて、IZUMO1-JUNO複合体の立体構造から明らかになった“相互作用に必須なアミノ酸残基”に変異を挿入した、変異型IZUMO1トランスジェニックマウスと変異型JUNOノックインマウスの表現型解析を精力的に行う。これらのマウスの表現系はIZUMO1-JUNO制御系に直接関わる形質であり、IZUMO1とJUNOだけが結合出来なかった場合どのような生理学的影響が起こるのかを詳しく検証する。また、IZUMO1-JUNO制御系に関わる新規分子の探索も継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計画通りの経費の執行を行ったが、前年度までの未使用額分が次年度使用額となった。当初から予定している新規レセプターの探索や解析には、比較的費用が多く必要なため、前年度までの残額を活用し研究全体の円滑な進行に務める。
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