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2020 年度 実施状況報告書

マウスの卵管管腔上皮におけるヒダの形態的パターン形成の力学的機構

研究課題

研究課題/領域番号 17K15131
研究機関基礎生物学研究所

研究代表者

小山 宏史  基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 助教 (10530462)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード形態形成 / 数理シミュレーション / 機械的な力
研究実績の概要

卵管などの管腔器官においては、管腔側上皮に多数のヒダが観察される。ヒダの形態的なパターンは、①長軸方向に沿った整列、②長軸方向の枝分かれ、③位相欠陥、④管の断面内での放射状の枝分かれ、など様々である。これらのヒダは、上皮シートが湾曲することで形成されるが、その物理的なメカニズムは十分に分かっていないものが残っている。上皮シートの物理的(機械的)な性質は上皮細胞の性質によって決定される。例えば、上皮細胞間の接着力などの機械的な力が重要な要素である。また、上皮細胞は、基底側の細胞外マトリックスや間質系細胞との間で牽引力を発揮することで上皮シートの動態に影響を与える。したがって、ヒダの形態のパターン形成を理解する上で、これら機械的な力を考慮した数理モデルとシミュレーションの実施は必要不可欠である。これまで、10万細胞のオーダーでシミュレーション可能な枠組みを構築してきた。しかし、細胞分裂・増殖を導入した場合には、上皮シートが湾曲した形状を安定に維持できないことが分かった。本年度では上皮シートを安定に維持できる物理的なルールを発見した。これによって、細胞分裂・増殖を伴う卵管の発生のシミュレーションが可能となる。他方、細胞間の機械的な力を顕微鏡ライブイメージングデータから統計的に推定する方法を検討した。細胞外マトリクスとの牽引力が強い系においては、それがある傾向を伴うノイズとして推定値に現れてきてしまうことがわかった。卵管では牽引力を直接計測することはできないが、ノイズを理論的に差し引くことで細胞間の力を予想できる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

既に開発したシミュレーションの枠組みに対して、細胞分裂・増殖を導入しても細胞シートを安定的に維持できるようになったことから、器官形成についての大規模なシミュレーションが可能となった。数理・理論的には大きな発展性を見込める進捗である。一方、組織学的な知見の収集については、計画通りには取り組めていない。

今後の研究の推進方策

巨大な組織や器官の形態形成を細胞レベルの事象からシミュレーション可能とする枠組みが整いつつある。このような枠組みはこれまでなかったので、今後、本枠組みを活かして、細胞増殖などの細胞レベルの事象、および、平滑筋の伸縮運動などのマクロな事象によってヒダの形態が説明できるかを検証していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

出張旅費、および、論文執筆の費用が生じなかったこと、また、組織学・生理学実験の進行が遅延したことによる。翌年度は、計算機資源の整備、および、論文執筆に多くの予算を配分する予定である。

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公開日: 2021-12-27  

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