研究課題/領域番号 |
17K15132
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鬼丸 洸 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス 技術基盤研究センター, 研究員 (30787065)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 転写制御 / ディープラーニング / 次世代シーケンサー / 形態形成 |
研究実績の概要 |
本研究ディープラーニングを応用した形態形成における全ゲノム転写制御ネットワークの推定方法を目的としており、研究計画として主に "A.四肢形成及びヒレ形成過程におけるATAC-seqを用いた制御配列候補の同定"、"B.ディープラーニングを応用した全ゲノム転写制御ネットワーク推定方法の確立"、の2つの課題を設定している。 課題A.四肢形成及びヒレ形成過程におけるATAC-seqを用いた制御配列候補の同定 この課題においてはすでに四肢形成におけるATAC-seqデータの取得に成功しており、リプリケイツ間のバラツキも低く、データクオリティーは概ね良好である。データは課題Bにおいて開発予定のソフトウェアを用いて解析予定であるが、現在のところ配列の進化的保存性や転写因子のモチーフの頻度の解析、時間的なダイナミクスを示す制御配列と定常的なものの違いなど様々な解析を行っている。ヒレ形成過程においては発生段階表の作成を終え、サンプル調整においての条件検討を行っている。 課題B.ディープラーニングを応用した全ゲノム転写制御ネットワーク推定方法の確立 この課題においては、"ローカルなゲノム配列の特徴抽出"と"グローバルなゲノム配列の特徴抽出"といった2種類のソフトウェアの開発に取り組んでいる。前者では、遺伝子制御配列の特徴をディープラーニングを用いて解析し、どういった転写制御因子が制御に関わっているかを同定するものである。後者では、制御配列とプロモーターの組み合わせを予測することにより、どの制御領域がどの遺伝子を制御しているのかを推定する取り組みである。"ローカルなゲノム配列の特徴抽出"については、すでに発表されている類似のソフトウェアのパフォーマンスを上回るものの開発に成功し、現在、論文の投稿準備を行っていおり、"グローバルなゲノム配列の特徴抽出"を行うソフトウェア開発に移行を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒレ形成過程におけるATAC-seqデータの取得が遅れている。原因としては、イヌザメという海産生物のヒレを対象にしているため、サンプル調整時の浸透圧調整に難があることが考えられる。ATAC-seq自体は非常にシンプルな手法であり、哺乳類への応用は多数報告されている一方で、海産生物への応用は非常に少ない。解決方策としては、軟骨魚類の細胞培養に使われているリン酸バッファーなどを今後試していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
課題Aについては、ヒレ形成過程におけるATAC-seqデータの取得をプライオリティとして取り組む。しかしながら、バックアッププラントして、HiCやChip-seqなど、代替となる手法に関しても検討をしていく。また、四肢形成過程のATAC-seqデータのみでも十分なインパクトがあると考えられるので、現状のデータのみでの論文投稿についても検討していく予定である。 課題Bについては、第一段階としての"ローカルなゲノム配列の特徴抽出"を行うソフトウェアの論文投稿が終わり次第、プロモーターエンハンサー相互作用を予測するソフトウェアの開発に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル調整の条件検討が長引いているため、予定していた次世代シーケンサーを使用するための予算が未使用となっている。具体的には、軟骨魚類であるイヌザメ胚のヒレ形成過程において、ATAC-seq(次世代シーケンサーを用いる手法)用のサンプル調整の条件検討を現在行っているため、次世代シーケンサーを使用する段階に至っていない。 使用計画としては、クオリティーの高いサンプル作成方法が見つかり次第、予定していた次世代シーケンサーを使用するための予算として使用する。
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