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2017 年度 実施状況報告書

マウス気管平滑筋をモデルとした間充織細胞極性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15133
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

岸本 圭史  国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (70700029)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードマウス気管 / 間充織 / 細胞極性
研究実績の概要

本研究課題では、マウス気管をモデルとして上皮近傍の間充織細胞、特に平滑筋細胞が上皮組織に向かって極性化するメカニズムの解明を目的としている。平滑筋細胞は上皮に向かって極性化するため、上皮組織が間充織の極性化を許容している可能性が高い。本年度は、この仮説を立証するため、まずin vitroの上皮・間充織の再構成系の確立により、平滑筋細胞の極性化の意義を直接的に観察することを試みた。胎生12.5日目のマウス胎仔気管から上皮細胞と間充織細胞を回収して、マトリゲル内で培養すると間充織組織がSphere化した上皮細胞に向かって移動する様子が観察された。さらに、上皮細胞に向かう移動はWnt5aを欠損することによって阻害された。これらの結果は、上皮が間充織の極性化を誘導すること、さらにWnt5a signalが間充織細胞の極性化・移動に必須であることを示している。
次に、上皮由来の極性誘導因子を同定するため、間充織のおいて活性が上昇するシグナルを各種レポーターマウスと免疫染色により検討した。その結果、気管平滑筋ではWntおよびShhシグナルが活性化していることを見出した。さらに、in situ hybridizationより、Wnt7b, Shhが上皮組織に発現していることを発見した。
また、平滑筋の力学的作用が極性化に与える影響を調べるため、平滑筋細胞の分化のマスターレギュレーターであるSerum response factor (Srf) の組織特異的ノックアウトマウスを樹立した。このマウスの上皮近傍の間充織は平滑筋マーカーが発現していないにもかかわらず、間充織組織の極性や細胞形態が正常に維持されていることを発見した。この結果は、上皮近傍の間充織細胞は平滑筋分化・収縮に依存せず、極性を獲得することを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では、上皮組織が近傍の間充織組織を極性化するメカニズムを解明することを目的としている。本年度の研究において、気管上皮細胞と間充織細胞のin vitroの共培養系を確立し、間充織細胞が上皮に向かって移動する様子をLive imagingでとらえることに成功した。この結果は、上皮が間充織の極性化を誘導するという仮説を直接的に証明するものである。さらに、極性化の生じる胎生11.5, 12.5日目の上皮近傍の間充織ではShh, Wnt signalingが活性化することを発見した。加えて、間充織細胞極性化のタイミングと一致して、上皮組織ではShh, Wnt7bが発現していることを見出した。これらの結果は、上皮由来の間充織極性化誘導因子として上記因子が候補となりうることを示している。これらのシグナルの機能的な重要性についても今後、検討する必要があるものの、概ね、研究は順調に進行しているといえる。
一方、気管において平滑筋細胞への分化を阻害されるSrf欠損マウスにおいても、間充織組織の極性化は維持されていたことから、間充織細胞の極性化に平滑筋の収縮運動および分化は必要ないことが分かった。これらの結果をうけて、平滑筋以外の上皮近傍の間充織細胞の極性を調べたところ、平滑筋細胞以外の軟骨前駆細胞もまた上皮組織に向かって極性化していることを発見した。今後は平滑筋細胞に限らず、上皮近傍の間充織細胞全般を対象として間充織細胞極性化のメカニズムを探索していく必要がある。

今後の研究の推進方策

本年度の解析より、上皮組織が上皮近傍の間充織細胞に作用して極性化を誘導していることを突き止めた。さらに、上皮近傍の間充織細胞においてShh, Wnt signalingが活性化していることを見出した。
今後の研究ではまず、これらのシグナルが間充織細胞の極性化に与える影響を調べる。Shh欠損マウス、b-cateninの欠損マウスの気管を用いて免疫染色によって、間充織組織の極性の有無を調べる。
間充織細胞の極性化の過程でWnt7bとShhが上皮組織で発現していることが分かった。これらの因子が平滑筋細胞の極性化を誘導するか否か検討する。具体的には、Shh, Wnt7bに浸したビーズと間充織細胞を培養することによって、間充織細胞がビーズに向かって移動するか否かをLive imagingにより観察する。これらの検討によって上記因子が極性誘導因子として働くか否かについて明らかにする。
ShhやWntシグナル以外の他の因子を探索するため、阻害剤を用いたスクリーニングを行う。阻害剤処理した間充織細胞と呼吸器上皮細胞を共培養することにより、極性化が阻害される分子を同定する。また各シグナルの作動薬やペプチドを用いて、間充織細胞の極性化を誘導できるかについて検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Orientated mesenchymal cell polarization and differentiation shape the trachea2018

    • 著者名/発表者名
      Keishi Kishimoto
    • 学会等名
      Keystone Symposia Endoderm Development and Desease:Cross Organ Comparison and Interplay
    • 国際学会
  • [学会発表] 気管の形態形成における間充織極性化の重要性2018

    • 著者名/発表者名
      岸本 圭史
    • 学会等名
      第58回日本呼吸器学会学術講演会
  • [学会発表] Synchronized mesenchymal cell polarization and differentiation shape the trachea2018

    • 著者名/発表者名
      Keishi Kishimoto
    • 学会等名
      the Joint Annual Meeting of 70th JSCB and 51st JSDB
  • [学会発表] Oriented mesenchymal cells drive tracheal tubulogenesis.2017

    • 著者名/発表者名
      Keishi Kishimoto
    • 学会等名
      50th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biologists, 2017
  • [学会発表] Oriented mesenchymal cells drive tracheal tubulogenesis.2017

    • 著者名/発表者名
      Keishi Kishimoto
    • 学会等名
      18th International Congress of Developmental Biology, 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Mesenchymal cell polarity and differentiation shape mouse airway2017

    • 著者名/発表者名
      Keishi Kishimoto
    • 学会等名
      Consortium of Biological Sciences 2017

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公開日: 2018-12-17  

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