研究実績の概要 |
生命機能を支える臓器は、管腔構造を基本とする。内腔を覆う上皮細胞とそれらをささえる間充織細胞によって構成される。発生の過程では、上皮組織と間充織組織が互いに相互作用しながら正常な臓器を形づくっていく。本研究では、間充織細胞、特に、気管平滑筋前駆細胞が放射状極性を獲得する分子機構の解明を目指している。申請者は、先行研究において平滑筋前駆細胞の極性化が、マウス気管の伸長に必要であることを報告している。極性化機構の解明は、臓器の形態形成の根本的理解に繋がる。気管平滑筋前駆細胞は上皮組織近傍に形成され、上皮組織に向かう極性を獲得することから、気管上皮組織が間充織組織の極性化を許容している可能性が高い。 申請者らは初年度の検討において、平滑筋前駆細胞が上皮細胞由来のスフェロイドに向かって移動することを発見した。この観察結果は上皮組織が平滑筋前駆細胞の極性化を誘導している事を示している。さらに、極性化の生じる胎生11.5, 12.5日目の上皮近傍の間充織ではShh, Wnt signalingが活性化することを発見した。加えて、間充織細胞極性化のタイミングと一致して、上皮組織ではShh, Wnt7bが発現していることを見出した。 最終年度において、Wnt signalingの間充織極性化における役割を調べるため、間充織特異的にb-cateninを欠損するマウスを樹立、解析した。その結果、平滑筋組織の配向性が顕著に乱れることが分かった。これらの結果は、上皮由来のWnt が平滑筋前駆細胞の極性化を誘導している可能性を強く示している。
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