研究課題/領域番号 |
17K15137
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岡本 暁 新潟大学, 自然科学系, 助教 (10582421)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ペプチド / 器官間情報伝達 / 道管液 / シンク-ソース / 光合成産物 |
研究実績の概要 |
本報告書では、ターゲットとするペプチド遺伝子名をCSP (Carbon Starvation-related Peptide) とする。シロイヌナズナおけるAtCSPとそのホモログの多重ノックアウト系統とエストロゲン誘導性AtCSP過剰発現系統を作成し、それらを用いてRNAシークエンス解析を行った。その結果、地上部においてAtCSP過剰発現(エストロゲン誘導)により発現量が2倍以上増加し、AtCSP多重ノックアウト系統で発現量が1/2以下に減少した遺伝子は25個あった。その中にはデンプンや糖の代謝に関わるものは1遺伝子しか見られなかったものの、13個の遺伝子がシロイヌナズナの遺伝子発現データベースなどで植物ホルモンの一種であるABAに応答性であることがわかった。このことから、AtCSPの過剰発現やノックアウトにより地上部のABAの蓄積量に変化が生じた可能性がある。なお、ABAは気孔の開閉に関わることがよく知られているが、一方でシロイヌナズナやリンゴにおいて、ABAが葉に蓄積するデンプンの代謝に影響を及ぼすこともこれまでに報告されている。 一方、AtCSP過剰発現(エストロゲン誘導)により発現量が1/2以下に減少し、AtCSP多重ノックアウト系統で発現量が2倍以上に増加した遺伝子は20個あったが、ABA応答性の遺伝子は1つであった。一方、根においても同様の発現解析を行った。しかしデンプンや糖の代謝に関わるものやABA応答性の遺伝子は見出されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は2017年12月に新潟大学へ異動した。異動先において新しい研究室を立ち上げるにあたり、消耗品類や機器の購入、そのセットアップ、植物の栽培環境の整備、遺伝子組み換え実験を実施するための手続き、実験サンプルの移送などに想定していた以上に時間がかかり、実験に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
AtCSP遺伝子の過剰発現やノックアウトにより、地上部において多数のABA応答性遺伝子の発現量が変動することがわかった。このことから地上部におけるABAの含量が変化している可能性が考えられる。その一方で、AtCSPシグナル伝達系がABAを介さずにABA応答性遺伝子に作用する可能性や、二次的な要因でABA応答性遺伝子が発現応答した可能性もある。次年度はこれらの可能性を検証するために、まずAtCSP遺伝子の過剰発現やノックアウトにより地上部のABA含量が変化するかどうかを調べる。また、その結果に応じてABAシグナル伝達経路上の因子に着目した解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究代表者は2017年12月1日付で異動した。それに伴い2017年度の後半は計画通りに研究を遂行することが困難となり、未使用の予算が生じた。
使用計画:研究環境がほぼ整ったため、これから再開する実験における消耗品費などに使用する計画である。
|