研究課題
植物の免疫機構を分子レベルで明らかにすることは、病原菌に対する植物の防御応答機構の理解だけでなく、耐病性作物の創出にも繋がることから、植物の病原菌に対する応答機構の理解は重要な研究課題である。昨年度までに、植物のDNA損傷応答において中心的な役割を果たしているSOG1転写因子が、病原菌に対する防御応答においても重要な役割を果たしていることを見出した。そこで、SOG1が病原菌感染に応答してどのように働くことで防御応答を引き起こしているのか調べたところ、病原菌感染に応答してSOG1遺伝子の転写が誘導され、感染させた葉においてタンパク質が蓄積してくることを明らかにした。さらに、病原菌感染とDNA損傷との関係を調べたところ、病原菌が感染した部位の細胞においてDNA損傷が起きていることが示された。SOG1はDNA損傷に応答してリン酸化されることで活性化されることが明らかにされているが、非リン酸化型SOG1を導入した植物では防御応答が起きなかったことから、病原菌感染によるDNA損傷の蓄積がSOG1を介した防御応答の活性化に関与していることが考えられた。また、病原菌が感染するとサリチル酸が蓄積してくることが知られているが、サリチル酸によりSOG1遺伝子が誘導されることも見出した。以上の結果から、病原菌感染により、DNA損傷およびサリチル酸の蓄積、そして、SOG1遺伝子の発現誘導および活性化が起きることで、SOG1を介した防御応答が起きていることが示唆された。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Current Opinion in Plant Biology
巻: 51 ページ: 1~6
10.1016/j.pbi.2019.03.001
eLife
巻: 8 ページ: -
10.7554/eLife.43944