研究課題
細胞内のオルガネラ間では、膜交通を介した活発なタンパク質・脂質の輸送が行われており、これにより生命の恒常性が維持される。申請者はこれまでの研究から、膜交通制御に関わる構成因子が動物と植物で異なることを明らかにしており、植物独自の膜交通制御機構の解明に取り組んできた。植物独自の膜交通制御因子であるARA6は、相互作用因子であるエフェクターを介して機能することが予想され、申請者は、ARA6のエフェクター候補として「PH15」タンパク質の単離・同定に成功した。本研究課題では、前年度までの研究で、GFP融合によりPH15とそのオルソログであるPH16が、根端分裂組織の静止中心付近の細胞において、細胞膜や核近傍のドット状構造に局在することを示した。また、これらが、膜交通関連因子変異体と遺伝学的な相互作用を有することを示唆するデータを得た。今年度は、GFP融合PH15とGFP融合PH16がph15やph16変異を相補するか調べた。その結果、本実験で使用したGFP-PH15とGFP-PH16コンストラクトはこれらの変異を相補しないことが分かった。そこで、PH15、PH16を含むゲノム領域がph15やph16変異を相補するかどうかについて調査を行ったところ、使用したゲノム断片はph15やph16変異を相補できないことが分かった。この結果から、実験に使用したプロモーター領域が不十分であった可能性が考えられたため、今後、これの再検討を行うことで、PH15とPH16の組織特異的な発現様式と細胞内局在パターンが正確に理解できるようになると考えられる。
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