研究課題/領域番号 |
17K15145
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
岩渕 功誠 甲南大学, 理工学部, 研究員 (30583471)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 葉緑体 / 光応答 / 核様体 / 光分散反応 / 暗凝集反応 / ゼニゴケ / cpDNA / SiR |
研究実績の概要 |
我々は近年,ゼニゴケの葉緑体DNA(cpDNA)が,明所で小さなスペックルを複数形成しながら葉緑体全体に分散し(光分散反応),暗所でスペックルの消失とともに葉緑体中央に集まる(暗凝集反応)現象を発見した.本年度は核様体の光応答反応の仕組みの解明を目的として下記の成果を得た. 1.cpDNAの光分散反応の光波長依存性および光強度依存性:光分散反応は青色光(470 nm),緑色光(525 nm),赤色光(660 nm),遠赤色光(735 nm)の全ての波長の光によって誘導された,また,1-100 micromol m-2 s-1の範囲で光の強度を変えたところ,強度に応じて光分散反応は誘導された.以上の結果はcpDNAの光分散反応は光強度に依存することがわかった. 2.核様体構成タンパク質の同定:亜硫酸還元酵素MpSiRを同定した.MpSiR-YFPを発現する形質転換ゼニゴケを作製して観察を行ったところ,MpSiR-YFPは明所でスペックルを形成して葉緑体全体に分散し,暗所で葉緑体中央に集まった.またMpSiR-YFPはcpDNAと常に共局在した.以上の結果より,MpSiRはcpDNAとともに核様体を形成していることがわかった.またMpSiR-YFP発現体を作製できたことにより,核様体の生細胞イメージングが可能となった. 3.核様体光応答反応の普遍性:種子植物シロイヌナズナ,シダ植物ホウライシダ,藻類シャジクモのcpDNAを観察したところ,ホウライシダでのみゼニゴケと同様の光分散反応と暗凝集反応を確認することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゼニゴケの形質転換体の作製に時間を要したことで,当初予定していた突然変異体スクリーニングを実施することができなかった.ゼニゴケの形質転換体作製は当研究室では初の試みであり,実験系の確立に手間取ってしまった.以上のことより研究はやや遅れていると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
主に下記の方法で核様体の光応答反応の仕組みの解明を目指す. 1.核様体の生細胞イメージング:MpSiR-YFP発現ゼニゴケを用いて,核様体を生きた細胞で観察し,凝集から分散に至る過程を詳細に追う.また,MppTAC3やMpWHIRLYなどの核様体構成因子候補についても可視化を行う. 2.突然変異体ゼニゴケの単離と解析:MpSiR-YFPを核ゲノムにランダムに導入することにより遺伝子破壊を行い,核様体の光応答反応に異常を示す変異体を目指す.また,MpSiRをはじめとする核様体構成因子に標的を絞って遺伝子破壊を行い,核様体の様子を調べる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたより物品費の購入が少なく済んだのが主な理由である.2019年度では形質転換体作製,電子顕微鏡観察,共同研究の打合せ,成果発表,機器の購入などでより多くの支出が考えられるため,2018年度分を充当して対応したい.
|