研究課題/領域番号 |
17K15146
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
池内 桃子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (00633570)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞リプログラミング / 再生 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
植物は強いストレスに曝されると体細胞が脱分化あるいは分化転換し、器官や個体を新生できる。たとえば器官の一部を切り取ると、傷口に細胞の塊であるカルスを形成しさらには根やシュートを再生して最終的に個体全体を再構築する。私は植物の器官再生や細胞リプログラミングの分子機構を明らかにすることを目指して研究を行っており、本年度は植物を傷つけてからカルスができるまでの時系列トランスクリプトームデータを発表した(Ikeuchi et al., 2017 Plant Phys)。そのデータセットの中で、傷処理後1時間で速やかに発現誘導される転写因子であるWOX13遺伝子に着目して、遺伝子の機能解析を進めた。wox13機能欠損体は、カルスの成長が抑制されている一方で、組織培養系におけるシュート再生効率が昂進するという表現型を示す。RNAseq 解析によって野生型とwox13変異体でカルス形成過程の遺伝子発現プロファイルを比較した結果、細胞伸長に関わる遺伝子群に顕著な差が認められた。一方で、細胞分裂を司る遺伝子群には明確な差は見られなかった。組織学的な解析も併せて、wox13変異体が示すカルス成長の不全は細胞伸長の不全に起因する可能性が高いと考えている。ではなぜ傷口において、細胞肥大が必要なのだろうか?私は肥大した細胞が物理的な「足場」として器官をつなぎ合わせるときに機能しているのではないかという仮説をたて、葉柄の接ぎ木実験系を構築して仮説の検証を進めている。現在、wox13変異体では接ぎ木の効率が低下しているという予備的な結果が得られている。本研究は、傷口を塞ぎ器官をつなぐという現象と、幹細胞を生み出し器官を再生する現象のトレードオフの可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
wox13変異体を用いた解析を通して、傷口に形成されるカルスの様々な生理機能について明らかにすることができる道筋がついてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
組織培養条件でシュート再生過程においてもRNAseq解析を行い、WOX13によって制御される遺伝子群を同定する。またWOX13-GFPの形質転換体を用いてChIPseq 解析を行い、WOX13によって直接制御される遺伝子群を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた植物育成用のチャンバーを今年度は買わないことにしたため。RNAseq, ChIPseq などの大規模実験を予定しており、そちらの消耗品に充てる予定である。
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