研究課題/領域番号 |
17K15148
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
大田 修平 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (20455926)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 藻類細胞 / 重金属ストレス / フリーズフラクチャー / オートファジー / リン脂質 |
研究実績の概要 |
オートファジー(ATG)は環境ストレスに応答する細胞内機構であり、真核生物において進化的に広く保存されている。陸上植物や藻類においてもATGは保存されているが、ATG関連遺伝子を欠損している種も存在する。しかし、ATG関連遺伝子の有無とストレス感受性の関係は明らかにされていない。ホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3P)はATG過程の上流においてセカンドメッセンジャーとして使われているリン脂質である。本研究ではPI3Pの細胞内動態を蛍光顕微鏡やフローサイトメトリーによって解析を行った。 本年度の実験では、緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii NIES-2235)や重金属に感受性の高い緑藻ムレミカヅキモ(Raphidocelis subcapitata NIES-35)を材料とし、金属ストレス曝露下でのPI3P動態を解析した。PI3Pに特異的に結合するPXドメインをもつタンパク質(p40phox)を精製し、これを用いた藻類細胞内のPI3Pを検出する間接蛍光抗体法の実験系を確立した。PI3Pの細胞内動態をフローサイトメトリーにより調べたところ、クラミドモナスはラパマイシンや重金属に応答して細胞内PI3P量を増加させた。一方、ムレキカズキモはラパマイシンや重金属に対してPI3P動態の変化を示さなかった。ムレミカヅキモではPI3キナーゼ複合体を構成するATG6をコードする遺伝子が欠損しているため、一連の観察結果を矛盾なく説明できる。本研究では並行してPI3キナーゼ阻害剤である3-MethyladenineやWortmanninの存在下での金属感受性に変化が生じることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PI3Pに特異的に結合するPXドメインをもつタンパク質(p40phox)を精製し、これを用いた藻類細胞のPI3Pを検出する間接蛍光抗体法を確立した。緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii NIES-2235)や高重金属感受性株である緑藻ムレミカヅキモ(Raphidocelis subcapitata NIES-35)をターゲットとし、重金属ストレス曝露下でのPI3P動態を解析することができた。また、当初は予定していなかったフローサイトメトリーによる解析も行うことができた。フリーズフラクチャーの観察にはもう少し時間を割く必要があるが、全体としておおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
フリーズフラクチャーによる免疫電験試料は2019年度までに作製したが、その観察がやや不十分であった。本年度は、その観察とデータ収集に注力したい。PI3キナーゼ阻害剤を用いた実験を行い、既存のゲノム情報と合わせて論文としてまとめたい。本年度は最終年度でもあるので、論文執筆や学会での成果発表に注力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に関する政府の基本方針基づいて、成果発表を予定してい学会等の中止が決定されたため、2019年度の旅費に相当する部分を執行せず、本研究課題を1年間延長することにした。
|