研究課題/領域番号 |
17K15150
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
相澤 清香 岡山大学, 自然科学研究科, 特別契約職員(助教) (90754375)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アデノシン / cAMP response element / CREB / ニューロメジンU / プロモーター |
研究実績の概要 |
脳下垂体隆起部(以下,隆起部)の生理機能の解明を目的とし,本研究ではラットの隆起部で発現するペプチドホルモンであるニューロメジンU(NMU)に着目して解析をした.ラットの隆起部におけるNmu mRNA発現は明期に高く暗期に低い日内リズムを示す.しかしながら,そのリズム形成のメカニズムや生理的意義は不明である。本研究では,隆起部NMUのリズム形成の制御因子を同定することを目的としている.隆起部NMUがどのような制御のもとに発現しているのかが明らかになれば,生理的な役割を考察することが可能である. ラットのニューロメジンU 転写開始点より5'上流域の解析により,cAMP response element (CRE) ホモロジー配列が存在することが明らかとなった.それはヒトを含む他の生物でも高度に保存されていた.培養細胞を用いたプロモーター活性の解析により,アデノシンはアデノシン受容体A2bを介してニューロメジンUプロモーター活性を促進することが示された.これは細胞内のcAMPシグナリング経路を介しており,アデノシンの作用により細胞内のリン酸化CREB量が増加した. 隆起部はメラトニン受容体を高発現することが古くより知られており,そのため隆起部は外部光環境を内分泌系に変換する役割をもつ内分泌器官であると考えられてきた.本研究により,隆起部はメラトニンだけでなく,アデノシンの制御も受けることが新たに示された.アデノシンは脳内において神経細胞の活動代謝により細胞外に蓄積する.つまり隆起部は脳内の代謝状態の情報を受けとっており,それを内分泌系に変換する可能性があることが新たに明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット生体内でのアデノシンの隆起部への作用を解析する予定であったが,投与量や投与回数を決定することが困難であり,また再現性も難しいものであった.そこで,ラット脳をスライスにしたスライス培養実験や培養細胞を用いた実験系での検討により,詳細な解析を行うこととした.その結果, アデノシンによるニューロメジンU mRNA発現の制御の詳細が明らかになってきた.
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今後の研究の推進方策 |
脳スライス培養法(ex vivo)および培養細胞を用いたin vitro実験系で,NMU転写制御機構のより詳細を明らかにする.NMU 5'上流域に解析において,新たにE-boxやD-boxのホモロジー配列を見つけており,時計遺伝子による転写制御を受ける可能性が新たに見出された.NMUの転写制御に関わる因子が新規に同定されることで,NMUのリズム発現の形成機構が明らかになることが期待できる.
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