メダカ性分化におけるPIWI-piRNAシステムの役割を明らかにするため、PIWIノックアウトメダカを作出し解析を行った。Piwil1ノックアウトでは、雌雄どちらにおいても一定頻度で2次性徴を示さない個体が出現すること、さらにこれらの個体では、性ステロイドホルモンレベルがコントロールに比べ優位に低いことを明らかにした。Piwil1ノックアウトの生殖腺における性分化をより詳細に解析したところ、Piwil1ノックアウト個体では両性ともに、ステロイド産生細胞のマーカーであるftz-f1陽性細胞の数が減少すること、性分化関連遺伝子であるp450-11βやaromataseの発現が確認されないことを明らかにした。そのため、Piwil1ノックアウト個体では生殖腺の性分化が正常に進行せずに性ホルモンレベルが減少した結果、2次性徴の異常が起こると示唆された。 Piwil1ノックアウトの表現系に関わる遺伝子を単離する為、次世代シークエンサーを用いてメダカ配偶子における網羅的解析を行った。雌雄ともにpiRNAの特徴的な長さの小分子RNAが認められ、メダカゲノムへの小分子RNAのマッピングを行うことで、エクソン領域にsmall RNAがマップされる候補遺伝子を同定した。これら候補遺伝子の発現状態をin situ hybridizationにより解析したところ、Piwil1ノックアウトの生殖細胞でのみ発現上昇する遺伝子を単離した。 これらの結果から、Piwil1ノックアウトでは標的遺伝子の発現抑制が解除され、生殖腺における性分化の破綻につながると予想される。
|