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2018 年度 実施状況報告書

成虫休眠を調節する脳内神経回路とその生理機能

研究課題

研究課題/領域番号 17K15155
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

原 佑介  国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (20749064)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード休眠 / 温度 / 味覚受容体 / インスリン / 単一細胞解析 / ショウジョウバエ
研究実績の概要

インスリン産生細胞(IPCs)は成虫休眠を調節する脳内神経回路の中枢である(Ojima, Hara et al., 2018)。初年度(H29年度)は、このIPCsにおける温度応答特性を電気生理学的手法により解析した。その結果、IPCsの温度応答は羽化後の飼育条件によって経験依存的に大きく変容する事が見出された。すなわち、羽化後、非休眠条件で育てられた雌のIPCsは低温に対する脱分極性の応答能を獲得し、低温刺激に対して大きな脱分極と持続的発火を示すが、休眠条件で育てられた場合にはそのような応答能は獲得されず、低温暴露時の発火は認められなくなる。この結果に基づき、本年度(H30年度)は非休眠条件のIPCsで見られる大きな脱分極応答の分子機構の解析を進めた。その結果、特定の味覚受容体がこの応答に関わることを新たに発見した。この味覚受容体がIPCsにおいて発現している事を実証するため、パッチ電極を用いた細胞質の回収による単一細胞RT-PCRを実施し、発現を確認した。さらに、IPCsで発現する4つのインスリン様ペプチド(Dilp1, 2, 3, 5)の発現についても単一細胞RT-PCRによる発現解析を行なった。その結果、それらペプチドの発現は温度応答特性と同様に、羽化後の飼育条件によって変化することが明らかとなった。したがって、環境依存的な膜特性の変化とインスリン様ペプチド発現の変化を組み合わせることにより、IPCsは卵巣発育を巧みに調節し、成虫休眠制御の中枢として機能するものと想定される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではIPCsにおける低温応答の分子機構の解明を目的の一つとして位置付けている。この点について、H29年度に既に同定したK2Pチャネルに続き、H30年度は味覚受容体の関与を新たに明らかにする事ができた。したがって、低温応答の分子実態の解明は着実に進展している。一方、当初のもう一つの目的としていたDorsal lateral peptidergic neurons (DLPs)に関する実験はやや遅れている。しかし、H30年度は当初の計画を超えた単一細胞での遺伝子発現解析に成功した。これにより、生理学実験で得られる単一細胞の膜特性の解析結果を、分子的アプローチから裏付ける強力な実験手法が確立された。以上を総合的に判断し、研究はおおむね順調と評価した。

今後の研究の推進方策

本研究では成虫休眠を制御する新規細胞としてDLPsを想定し、この細胞の卵巣発育における機能解析を計画している。この計画に基づき、H30年度に確立した単一細胞での遺伝子発現解析を新たなツールとして加え、以下の実験を実施する:
1. 予備実験より、DLPsで発現するある特定のホルモン受容体が休眠調節に関わる事が明らかとなっている。しかし、そのホルモンがDLPsの機能をどのように調節するのかは分かっていない。H31年度は、このホルモンを作用させた時にDLPsにどの様な膜電位応答が生ずるのかを調べ、DLPsの電気活動と休眠との関係を探る。
2. DLPsがIPCsといかに協調して休眠を制御するのかを探るため、DLPsとIPCsの接続関係を調べる。具体的には、光遺伝学的手法によりIPCs/DLPsを活性化し、その時のもう一方のニューロンの膜電位応答を調べる。また、別のアプローチとして、IPCsとDLPsから同時に電気活動記録を行う。この二つの手法を用いた実験から両者の接続関係について結論を得る。

次年度使用額が生じた理由

DLPsの研究の進捗に遅れが生じたため、未使用額が生じた。この未使用額については、生理学実験で使用する温度コントロール装置の購入と論文投稿費用に充てることとする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Genetic dissection of stress-induced reproductive arrest in Drosophila melanogaster females2018

    • 著者名/発表者名
      Ojima Noriyuki、Hara Yusuke、Ito Hiroki、Yamamoto Daisuke
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 14 ページ: e1007434

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1007434

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Acclimatization to cold temperature of brain insulin neurons drives reproductive dormancy2018

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Hara, Noriyuki Ojima, Hiroki Ito, Daisuke Yamamoto
    • 学会等名
      13th Japanese Drosophila Research Conference
    • 国際学会
  • [備考] 第9回森脇大五郎賞3rd Prize受賞

    • URL

      http://www2.nict.go.jp/frontier/evoneuro/topics/180920_jdrc.html

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公開日: 2019-12-27  

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