本研究ではメダカをモデル動物とし、光受容分子オプシン5-like1(Opn5L1)の生理機能を明らかにするため、Opn5L1発現細胞においてレポータータンパク質の遺伝子を発現する遺伝子組み換えメダカを作製し、解析することを試みている。前年度までの課題として、遺伝子導入に用いた遺伝子コンストラクトの導入効率が悪いこと、スクリーニングにかかる手間と時間が過大であること、Opn5L1プロモーターの転写活性が低いことなどから、解析に用いる事が可能な遺伝子組み換えメダカを得ることができていなかった。 最終年度は、より効率的にトランスジェニックメダカを作製するためのベクターの構築を行った。まずスクリーニングの手間をなるべく省くため、ゼブラフィッシュ心筋特異的遺伝子(cmlc2)プロモーターに蛍光タンパク質(EGFPまたはmRFP)とSV40ポリAを連結した配列を搭載した。これにより、遺伝子導入の可否を孵化前の段階で心臓の蛍光の有無によって判別できる。Opn5L1プロモーターの転写活性が低いために、レポーター遺伝子の発現量が十分でない問題を解決するため、CRE/loxpシステムを導入した。Opn5L1プロモーターにCREリコンビナーゼを、メダカβアクチンプロモーターにloxp-STOP-loxpとレポーター遺伝子を連結したベクターをそれぞれ構築した。これらの遺伝子を導入したメダカにおいては、βアクチンプロモーターからの転写は通常STOP配列で停止しているが、Opn5L1発現細胞ではSTOP配列が除去され、レポーター遺伝子が発現すると期待される。またOpn5L1プロモーター-CREやβアクチンプロモーター-loxP-STOP-loxP-レポーターの配列は、cmlc2プロモーターや、ゲノム上で組み込まれた領域の近傍の遺伝子の影響を避けるため、インシュレータ配列で挟み込むように設計した。 現在これらのプラスミドをメダカ卵へのマイクロインジェクションにより導入中である。
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