研究課題/領域番号 |
17K15163
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸山 真一朗 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50712296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共生 / 進化 / 褐虫藻 / サンゴ共生系 / 食胞 / 環境応答 |
研究実績の概要 |
造礁サンゴなどの刺胞動物と、褐虫藻(Symbiodinium spp.)と呼ばれる単細胞藻類との細胞内共生は、熱帯海域の生態系を支える重要な一次生産生物系として知られるが、共生の成立と崩壊の機構は未だ謎が多い。その原因として、共生した褐虫藻をミトコンドリアや葉緑体のような「固定的なオルガネラ」として捉え、単に共生藻の総数(静的観測値)のみを問題にする傾向が強く、共生系全体としての共生藻の増減や出入の収支(動的構造)を分析できていないことが挙げられる。本研究の目的は、安定な共生系を共生体の出入が釣り合った動的平衡にあると捉え直し、固定的に見える宿主細胞における共生状態の時間的変化を個々の褐虫藻細胞を標識・追跡することで動的構造を計測し、これを指標に環境変動への初期応答過程を解明することである。 本研究では、まず安定した観察解析系を構築するため、餌に混ぜ込んだ蛍光ポリスチレンビーズをプローブとしてモデル刺胞動物であるセイタカイソギンチャクに食べさせ、内胚葉細胞内の食胞に取り込ませた後、その位置と移動過程を経時的に観察した。その結果、非常に活発な形態変化を見せる刺胞動物においても安定した撮像を可能にし、プローブの追跡を容易に行うことができる系を構築することに成功した。またこれを応用することで、生きた褐虫藻をプローブとした場合でも、刺胞動物体内での動態も経時的に追跡観察することが可能となった。こうした実験系を用いて、上記二種のプローブを用いて比較解析したところ、蛍光ビーズと褐虫藻とでは動的構造に大きな特徴的差異があることが明らかになった。この成果は、共生系における生理的機能だけでなく、サンゴ礁における主要な一次生産者である褐虫藻の生態的機能を解明する上でも重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画にあったように、蛍光ビーズと褐虫藻という二種類のプローブを用いた解析系を構築することに成功しことなどから、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も研究計画に基づいて計画を進めていくと共に、これまで構築した解析系のさらなる精度の向上に努めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養条件の改良により、安価な設備で条件の良い培養を行うことができたため、培養設備への使用額が予定を下回った。これを次年度使用額とすることで、翌年度に予定している消耗品購入、次世代シーケンス費用などに充填する。
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