研究課題
自殖の進化は,何度も繰り返し起きた「平行進化」の好例である.繰り返し起きた自殖は,どのような遺伝メカニズムにより生じ,ゲノムにどのような影響を与えるのか.接合藻類ヒメミカヅキモでは,他殖系統(ヘテロタリック系統)と自殖系統(ホモタリック系統)の進化的移行が種内で少なくとも3回平行的に起きてきたことが知られている.本研究では,多くのヒメミカヅキモ野生系統を利用し,連鎖解析による順遺伝学的なマッピングや比較ゲノム解析・集団遺伝学的解析を通して,自殖遺伝子座の同定や,自殖の進化がゲノムのさまざまな性質にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした.ヘテロタリック,ヘテロタリックの野生系統のリシーケンスデータ(Illumina HiSeq 2500/3000)の集団遺伝学的解析を行ったところ,部分重複・欠失などのゲノム構造変異が系統間で多数見られることが明らかになった.さらに,フレームシフトやPremature stop codonなどタンパク質に有害な影響を与えうる突然変異量を調べたところ,重複領域でこれらが多く蓄積しており,重複領域の多い系統は結果として有害突然変異を多く保持することがわかった.部分重複・欠失などのゲノム構造変異が多数みられることはリシーケンス解析から示唆されたものの,1系統へのショートリードのマッピングでは大規模な重複・欠失の詳細は分からなかった.そこで,新学術領域・先進ゲノム支援のサポートにより,新たに3系統(ホモタリック1系統,ヘテロタリック2系統)のリファレンス配列をPacBioシーケンスにより作成した.現在デノボアセンブリが進行中であり,今後配列の網羅的な比較解析を行うことで,生殖様式の変化に伴って生じたゲノム構造変異の詳細を明らかにする予定である.
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Molecular Plant-Microbe Interactions
巻: 印刷中 ページ: -
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Development, Growth & Differentiation
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