研究課題/領域番号 |
17K15171
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
笹川 幸治 千葉大学, 教育学部, 准教授 (30647962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オサムシ科 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、これまで幼虫食性および幼虫形態が未知であったオサムシ亜科の一種について飼育実験を行なった。その結果、繁殖型と幼虫食性を明らかにすることができ、且つ、形態解析用の1-3齢期の全てのアルコール液浸標本を作製することができた。さらに、平成31年度以降の飼育に使用するための、越冬成虫の採集も行なうことができた。
また、オサムシ科と同じ地表徘徊性甲虫であるオオヒラタシデムシ(シデムシ科)についても、比較のために飼育実験を行なった。昆虫幼虫餌(ミルワーム+ウジ)、ミミズ餌、肉餌(脊椎動物餌としての牛肉)での飼育を行ない、雌の産卵数と幼虫成長パフォーマンス(生存率と孵化後羽化までの生育日数)を比較した。その結果、雌成虫と幼虫で最適餌が異なることが明らかになった。雌の産卵数は、昆虫幼虫餌<ミミズ餌<肉餌、であるのに対し、幼虫の成長パフォーマンは、昆虫幼虫餌<肉餌<ミミズ餌、となった。幼虫についての結果は、これまでの断片的な野外観察や、野外採集個体の安定同位体解析で示唆されてきたミミズ食と一致し、(1) オオヒラタシデムシ幼虫はおそらくミミズ専食であること、(2) 安定同体解析と飼育実験はともに幼虫食性の推定法として有用であること、の2つを示唆していた。特に(2)は、オサムシ科の幼虫食性に関する今後の研究において、有用な知見である。一方で、成虫食性については飼育実験と従来の知見(主に安定同位体解析)が一致しないという問題が残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オサムシ科については1種であるものの、系統的・生態的に重要な種についての飼育結果および形態解析用のサンプルを得ることができた。また、オサムシ科の研究の方法論について有用な示唆を与える結果が、同じ地表徘徊性甲虫であるシデムシ科の研究から得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度からの積み残しの課題である、ナガゴミムシ亜科とスジバネゴミムシ亜科についての飼育実験を再度試みる。また、平成30年度までの結果で、日本産オサムシ亜科の主要亜属についての知見を明らかにすることができた。残りの亜属に属する種についての知見を集めていく。また、これまで得られた結果のとりまとめも行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:平成30年度は、大学業務が忙しくて、あまり野外調査に行くことができなかった。また、指導学生で本プロジェクトに関わる研究を行なう者がいなかったので、それも支出が減った理由として挙げられる。 来年度以降の使用計画:来年度以降は、指導学生に本プロジェクトに関わるテーマを行なう者が出てくる予定なので、研究の進展が見込まれる。また、調査に行く機会も増えることが見込まれる。よって、飼育用品の購入や旅費に使用する予定である。
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