研究実績の概要 |
令和2年度は、対象分類群の飼育時期に新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令されたため、当初予定していた飼育実験と室内実験は実施できなかった。そのような状況下でも実施可能な研究として、口器形態と関連する器官の一つである消化管(alimentary canal)の構造を、手元にあるサンプルや近場で採集できる種を対象に調べた。その際、食性/系統性が異なる種を選定し、消化管構造が食性と系統性のどちらを主に反映しているのかを調べた。 1.外形の観察:生体を冷凍庫にいれて仮死状態にして、生理食塩水内で解剖し、実体顕微鏡で観察・撮影を行なった。処理後は70%エタノールで保管した。その結果、これまでに報告されている知見(Yahiro 1990, 1996, 1998, 2014)を確認するとともに、新たな形態情報を得ることができた。 2.組織構造の観察:上記1で明らかにした消化管の各部位について、組織構造を観察するための切片標本を作製し観察・撮影を行なった。サンプルは、動物の組織標本の一般的な作製手順に従った。すなわち、ブアン液で固定したサンプルをエタノール、キシレンを用いた処理を経てパラフィンに包埋した。包埋標本はミクロトームで5~10マイクロメートルの厚さに切り、アルシアンブルー染色とヘマトキシリン・エオシン染色を行なった。 1と2で得られた今回の結果と、既往研究の結果から総合的に判断すると、消化管構造は食性よりも系統性を主に反映していることが推察された。
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