研究課題/領域番号 |
17K15173
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 愛果 北海道大学, 理学研究院, 学術研究員 (80467860)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 渦鞭毛藻 / 形態 / 系統 / 従属栄養 / 底生生物 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
タイドプールや海底、サンゴの表層や海藻の表面などを主な生息の場とする底生性渦鞭毛藻には、形態・生理・生態的に多様な幅広い系統が含まれる。一方、現在認識されている渦鞭毛藻類の分類体系は、主にプランクトン性渦鞭毛藻の研究に基づいている。分子系統学的研究が古くから行われてきた遊泳性渦鞭毛藻に比べて、底生性渦鞭毛藻の分子系統学的情報はまだ多くはないと言え、多くの種の系統関係が明らかになっていない。底生性渦鞭毛藻には系統的位置を推察することが難しい特異な形態をもつ種が数多く存在しており、渦鞭毛藻全体の進化過程を探るためにこれらの分子系統学的解析が待たれている。本研究は底生性渦鞭毛藻のうち、鎧板と呼ばれるセルロース質の殻をもつ有殻種を主な研究対象として、その系統的位置と多様性を明らかにすることを目的とする。 葉緑体を持たない従属栄養性の有殻底生性渦鞭毛藻の代表的グループであるアンフィディニオプシス属は、現在16種が記載されている。本研究では、沖縄県の砂浜から採集された砂サンプルより作成した粗培養株を作成し、この祖培養株から本属の新種を発見した。本種について、詳細な形態観察による鎧板配列の解析と、核コード18S rDNA・28S rDNA配列を取得して系統解析を行った。また、オーストラリアの砂浜の砂からも本新種と類似する特徴的な鎧板を持つ種が見つかった。オーストラリア産の標本の形態観察による沖縄産標本との比較と分子系統学的解析の結果から、オーストラリア産と沖縄産の標本は別種であると結論し、2種のアンフィディニオプシス属の新種の存在が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表研究者が出産した影響で、予定していた野外採集の多くを行うことができず、対象種のデータを多く取得することができなかったため、研究進捗状況はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き従属栄養性で有殻の底生渦鞭毛藻の野外採集と解析をおこなう。並行して、様々な培地や培養条件、餌の候補を試して培養株の確立を目指し、確立後は微細構造の詳細な観察と生活環や摂食方法の記録を行う。本研究で得られた形態データと分子系統学的解析結果から、各クレードに特徴的な形態形質の探し出し、現在提唱されている科・属レベルの分類の妥当性について考察する。特に、今までに得られた全てのアンフィディニオプシス属のデータを含めた系統解析を行い、その結果と形態的特徴を照らし合わせ新しいグループへ細分することを検討するために考察をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出産後の影響で、予定していた野外採集の多くを行うことができなかったため(現身分は育児休暇が得られず、「育児休暇の取得に伴う補助事業期間延長」は申請できなかった)。そして、野外採集後に引き続き行う予定の実験の一部も行うことができなかったため。今は子供が保育園の生活に慣れ、研究できる環境が安定してきたため、昨年度に行えなかった野外採集を実施し、より多様な種を採集してデータを加え、研究結果をまとめる。
|