研究課題
本研究は,多様な塩濃度環境に生息するアゴナガヨコエビ科端脚類を用いて,異なる塩濃度環境への適応進化を明らかにすることを目指すものである.ゴトウドウクツヨコエビRelictomoera relicta (Ueno, 1971)は五島列島福江島の溶岩洞窟に生息する種である.本種の生息環境は汽水域であり,アゴナガヨコエビ科の進化を考える上で非常に重要な種である.本種については前年度に分類学的問題を解決し,系統的位置を明らかにした.今年度は本種の唯一の生息地である五島列島福江島の溶岩洞窟で生息環境のデータを収集するとともに,保全に向けた生息状況の確認も行った.アゴナガヨコエビ類には,長崎県対馬から知られるツシマドウクツヨコエビのように,地下水などアクセスが困難でサンプル収集が進まず,系統的位置が明らかに出来ていない種が多く存在する.このような種の発見を目的とし,京都大学との共同研究で環境DNAを用いた地下水性ヨコエビ類の探索も開始した.これまでにモデルとして調査した京都市内の地下水からメクラヨコエビ類のDNAを検出し,解析を行っている.海産のアゴナガヨコエビ科についても分類学的研究を進展することができた.広島大学附属練習船による南西諸島航海では,深海域から複数の未記載種が発見され,現在分類学的研究を進めている.深海性種を含めた系統関係が明らかにされることで,海域においても浅海から深海もしくは逆方向の適応放散が生じた可能性を検証することが可能になる.
2: おおむね順調に進展している
アゴナガヨコエビ科について,海域から汽水,淡水域まで幅広い環境において着実に種多様性を明らかに出来ている.分類学的な位置が不明であった種の再検討も進んでいる.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
日本各地の浅海や南西諸島の深海域から得られた未記載種について,記載論文の公表を進めていく.また,分類学的研究により実在が明らかになった種について,進化過程を明らかにし,アゴナガヨコエビ科の生息環境の多様化を考察する.日本以外のアジア地域の種については再検討が遅れているが,これらについてもサンプリングを実施し,種多様性の解明を目指す.
次年度使用額が生じた理由は,当初の想定より解析サンプル数が少なくなったことによる.発生した次年度使用額については,サンプリングのための旅費および分子系統解析に必要な消耗品,DNA塩基配列を決定するためのシークエンスサービスの利用費用として使用予定である.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 6件、 査読あり 11件) 学会発表 (2件)
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