研究課題/領域番号 |
17K15175
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
遠山 弘法 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特命助教 (00571837)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マレーシア / 植生調査 / 種同定 / 誤同定 / 多様性評価 |
研究実績の概要 |
過去数十年という短いタイムスケールで行われた熱帯林伐採は, 数億年という長い進化的な歴史を背景に形成された植物多様性の急速な消失を引き起こし、植物群集の構造を変化させる。本研究では、進化時間スケールを考慮に入れた生物多様性の評価・将来予測を、熱帯林伐採が著しいマレーシアで行うことで、今後マレーシア(ボルネオ)で生物多様性の維持・回復に向けてどのような方法が有効かを検討する事が目的である。 本年度は、プロットデータ整理、野外調査を行った。プロットデータとして、Ai Gasah地域(1プロット、193個体)、Kumayau地域(3プロット、432個体)、Limau地域(3プロット、542個体)、Sempar Urat地域(3プロット、548個体)、Sengkala地域(3プロット、592個体)、Silong地域(1プロット、194個体)、Simpang Batang地域(2プロット215個体)、Takan地域(3プロット、429個体)のデータを整理し見直した。野外調査は、Limau地域を訪れ、3プロット542個体の同定チェックを行い、287点の標本を作製した。それぞれに写真を撮影し、DNA抽出のための葉のサンプリング、3点の重複標本の作製を行った。標本はすべてアルコールに浸けられており、輸送許可が下りるまではBotanical resarch centre, Sarawakに預けてある。予備的な結果ではあるが、現地の研究者によって同定された結果と今回の調査による同定結果を比較すると科レベルで6.2%、属レベルで9.5%異なっていた。今後は種同定、DNAバーコーディングを進め、Limau地域の植物相をまとめる論文を準備する予定である。また、群集系統解析を通して、誤同定が多様性評価において、どのような影響があるのかを評価する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度を通して、プロットデータの整備、プロット樹種542個体の同定チェックを行うことができた。しかしながら、16プロットのうちの3プロットでしか調査を終えることができなかったため、進捗状況としてはやや遅れている。原因としては、カウンターパートが大きな予算をマレーシア国内で獲得し、本調査のためのスケジュール調整が難しかった点にある。また、代表者の異動に伴い、研究費が3か月ほど使えない時期が生じ、思うように進めることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究目的は変えず、解析プロット数を減らすことで時間の遅れを取り戻す予定である。また、前回は日本人2人で調査を行ったが、次回より調査人数を増やすことで、作業効率を上げる予定である。 今後は、昨年度サンプリングした個体のDNAシーケンスを行い、その配列を用いて、系統解析、群集系統解析を行い、多様性に影響を与える熱帯林伐採を定量化する。特に、系統樹の不確実性を考慮した解析を行うことで、検定結果の頑健性を確かめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、標本輸送、標本庫での同定作業のためにマレーシアに行く予定であったが、カウンターパートとのスケジュール調整がうまくいかず、断念した。また、DNA解析のためにマレーシア研究者を招聘予定であったが、代表者の異動に伴い、研究費が3か月ほど使えない時期が生じ、思うように進めることができなかった。 残額は、旅費及び、DNA実験のための費用として利用する予定である。協力研究者の調査旅費を出すことで、野外調査を効率的に行えると考えられる。また代表者の異動に伴い、実験器具を新に購入する必要が出てきたので、その費用に充てたいと考えている。
|