研究実績の概要 |
過去数十年という短いタイムスケールで行われた熱帯林伐採は, 数億年という長い進化的な歴史を背景に形成された植物多様性の急速な消失を引き起こし、植物群集の構造を変化させる。本研究では、進化時間スケールを考慮に入れた生物多様性の評価・将来予測を、熱帯林伐採が著しいマレーシアで行うことで、今後マレーシア(ボルネオ)で生物多様性の維持・回復に向けてどのような方法が有効かを検討する事が目的である。 2022年度は、野外調査、DNAバーコーディング、解析を計画していたが、新型コロナウィルスの影響により野外調査を行う事が出来なかった。また、これまでの調査による標本の輸送についても同様に行うことができなかった。そのため、手元にある293サンプルでDNAバーコーディングを進め、rbcL及びmatK配列のシーケンスを終了した。DNAバーコーディングを参考に種同定を進めた結果、現地の研究者によって同定された結果と比較すると、科レベルで約10%、属レベルで約30%、種レベルで60%異なっていた。落ち葉標本などによる誤同定が一因だと考えられ、今回採集された証拠標本の重要性を示唆する。 得られた配列を用いて最尤法による系統推定を行い、化石記録の情報を組み込んで年代推定を行った。結果、APG体系に矛盾しない系統樹を得ることができた。 今後は種同定を進めるとともに、標本画像をデータベースに登録し公開していく予定である。また、群集系統解析を通して、誤同定が多様性評価において、どのような影響があるのかを評価する予定である。
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