本年度は入手していた二ホンカワウソ試料について、残っていた個体を次世代シーケンサーで解析し、それぞれ15GB程度のデータを得た。解析個体の中には、18年度および19年度に追加で収集することができた二ホンカワウソ2個体についても解析を行った。その結果、本計画開始時に収集済みだった10個体にあわせて2個体、合計で12個体の解析をおこなった。解析にチャレンジした個体の内訳は北海道2個体、本州6個体(東北1個体、関東2個体、近畿2個体、中国1個体)、四国4個体である。そこに17年度に解析した対馬のカワウソも加わるため実質13個体以上を解析した。しかし、このうち北海道の1個体、東北の1個体、近畿の1個体、中国の1個体はDNAがそもそも抽出されなかった。これらは標本保管上のホルマリン燻蒸などの処理が強く影響しDNAが分解されていた可能性がある。DNAが抽出できた個体のうちミトコンドリアゲノム配列を複数個体から得ることができた。これらのデータは今後、国際誌に投稿予定である。ミトコンドリアゲノム配列を得られなかった個体もいるが、カワウソのDNAも含まれており部分配列が決定されている、加えて予想以上に長いDNAが保存されている可能性があり、再チャレンジする予定である。 二ホンカワウソに加えて、本年度は二ホンカワウソに近縁なユーラシアカワウソLutra lutra、コツメカワウソAonix cinerea、ビロードカワウソLutrogale perspicillataの3種を動物園から飼料提供していただき、ドラフト全ゲノム配列を決定することもできた。これにより、これまでミトコンドリアゲノムに限っていた解析が、全ゲノムレベルで対応可能となった。そこで、今後は次世代シーケンサー解析から得た既存のリードデータを使い、全ゲノム解析に発展させる計画である。
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