研究課題
サンゴの人為的増殖は、世界中の分布域で取り組まれている。しかし養殖サンゴの遺伝的多様性や、放流効果に関する研究、長期的なモニタリング例は少なく、科学的知見に基づいた指針作りが急がれる。沖縄本島の養殖親集団からの放卵放精も確認されており、周辺海域の幼生供給源になっていることが予測されている。実際に人為的サンゴ群集が幼生供給基地として機能を発揮しているかどうかを調べるために、養殖集団と周辺海域のミドリイシ群体の血縁関係の有無を調べることも目的の一つである。恩納村恩納サンゴ養殖場からミドリイシ5種合計90群体、そして養殖場周辺の4地点の天然のサンゴ礁域に30m四方の方形区をもうけ、その区画内に生息していたミドリイシ5種の枝片を採取し、採取した全ての群体からDNA抽出をした。親子判定の手法にはマイクロサテライトマーカーを用いて得られる情報を使用する計画であった。しかし予備的に、親と子の関係がわかっているサンプルを用いて、マイクロサテライトマーカーを用いて11座位で各群体の遺伝子型の決定を行い既存のソフトウェア3つを用いて親子判定をしたところ、正答率は一番高いもので76%ほどであり、これでは十分であると言えなかった。そのため親子判定に使用する情報量を増やすことを目的として、採取した5種類のうちの1種類であるウスエダミドリイシAcropora tenuisを対象に、次世代シーケンサーを利用してMIG-seq(Multiplexed ISSR genotyping by sequencing)法により、塩基配列を得た。当該年度はMIG-seqで得たSNPsのデータを解析した。予備的に用いた、親と子の関係がわかっているサンプルのSNPsデータを元に、親子関係を含む近縁関係を示す閾値を決定し、それを養殖集団と周辺海域の野生ミドリイシ群体の血縁関係の判定に利用した。
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Aquatic Conservation
巻: In press ページ: -
Molecular Biology and Evolution
巻: 38 ページ: 16~30
10.1093/molbev/msaa216