研究課題/領域番号 |
17K15183
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
片山 泰樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (40549896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微生物 / 培養 / 堆積物環境 / メタゲノム |
研究実績の概要 |
堆積物環境に優占する微生物群について、分離培養・遺伝子解析手法によりその生理機能及び生理学的役割の解明を行っている。今年度は、海成由来堆積物試料を用いて集積培養を行い、目的とする微生物種が優先的に検出される培養物について次の成果を得た。 メタゲノム・メタトランスクリプトー ム解析により、目的とする微生物種ゲノムの再構築(90%以上のcompleteness)と遺伝子発現レベルの取得に成功した。アノテーション及びパスウェイ解析に基づくと、当該菌種は添加した培養基質の直接的な分解に関わっており、代謝産物が他の菌種に利用されることによって分解経路の促進、ひいては、目的種の増殖促進につながっていることが示唆され、培養実験に基づく結果と調和的であった。また、pangenome解析により、当該分解経路に関与する遺伝子は目的とする系統群に広く分布して存在することが明らかとなり、堆積物環境において重要な役割を持つことが示唆された。 また、上記集積培養を行う過程で純粋培養に成功した堆積物環境に広汎に分布する新門の細菌種について、生理学的・形態学的諸性質、及び、ゲノムの特徴を調べた。単糖等を資化する発酵型の従属栄養性で、他の発酵細菌と比較して増殖速度が非常に遅いこと、産生する発酵産物により顕著な増殖阻害が起こること、発酵産物を利用する別種との共生培養により顕著な増殖が促進することなどが明らかとなった。また、電子顕微鏡観察から、他の原核細胞には見られない細胞内に特徴的な構造を有しており、中枢代謝と関係する重要な役割を持つことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、堆積物試料から目的とする微生物種にの代謝経路の特定し、生態環境における重要性を示した。また、当初予定していなかった系統的に新規性の高い微生物種を新たに獲得し、その特徴を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
オミクス解析により推定した代謝経路に基づいて、目的微生物種の分離・培養を引き続き試みる。同時に、トレーサー法等を用いた培養実験により推定経路を検証し、最終的に純粋培養が出来ない場合であっても目的微生物種の生態機能が明らかにし、論文成果として纏める。 また、純粋培養した微生物種については、新種としての特徴付けを引き続き行い、論文成果として纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたオミクス解析の一部を次年度以降に行うこととし、その解析に必要な外注分析費が繰り越されたために次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、計画の内容通り外注分析費のために今年度使用する予定である。
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