研究実績の概要 |
我が国において多様性の解明が遅れている菌食性昆虫の寄生蜂について、主に分類学的研究を行った。研究は菌食性昆虫を寄主とする、あるいは寄主と想定されるヒメバチ科ハエヒメバチ亜科の寄生蜂を主な対象とし、野外調査と標本調査により資料を収集して実施した。研究の主要な成果は下記の通りである。 我が国のハエヒメバチ亜科は、研究開始前は5属5種が知られるのみであったが、本研究により、19属31種に増加した。これらのうち、Catastenus japonicus Watanabe, 2019とGnathochorisis nipponicus Watanabe, 2020は本研究課題に関連して記載された。また。Aniseres subarcticus Humala, 2007、Terminator notabilis Humala, 2007、Gnathochorisis flavipes Foerster, 1871、G. fuscipes Humala & Lee, 2016、G. koreensis Humala & Lee, 2016およびシイタケハエヒメバチOrthocentrus brachycerus Humala & Lee, 2020の6種は本研究課題に関連して日本から新たに記録された。上記の他に北方領土からのみ記録があった種の多くが北海道や本州から確認された。生態の研究成果として、森林総合研究所の研究者との共同研究により、害虫ナガマドキノコバエ類の寄生蜂相を明らかとし、代表的な寄生蜂であるシイタケハエヒメバチとヨリメハエヒメバチSymplecis bicingulata (Gravenhorst, 1829)については国内の分布や寄生様式、寄生率などを明らかとし、シイタケ圃場における有力な天敵となる可能性も示唆された。
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