研究課題/領域番号 |
17K15188
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石原 千晶 (安田千晶) 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80771451)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 個体識別 |
研究実績の概要 |
本研究は、複数種のヤドカリを対象として (i) 特定の相手に対する個体識別がいつ/なぜ失われるのか、 (ii) 相互作用の強度が異なる複数のプロセスでは確立/忘却速度が異なるのか、という2つの課題に取り組み、本分類群を認知能力研究の新たなモデル生物として提案することを目的としている。 上記の目的を達成するため、本研究では、強度の高い相互作用として繁殖期のメスをめぐるオス間闘争を、強度の低い相互作用として所有する貝殻をめぐる明確な闘争(貝殻闘争)の前段階である、小競り合いを用いている。また、個体識別が維持されている間は一般に2個体間の攻撃強度が低下するため、攻撃強度が1度目の遭遇と同じ水準まで回復したタイミングを「忘却」と見なしている。 ホンヤドカリの小競り合いを対象に2017年度に取得した (ii) に関わるデータが都合により利用できなくなったため、本年度から新たに本種の小競り合いデータの収集を開始した。予備的な観察から、本種のオスはメスよりも1年を通して攻撃的であり、発達した武器形質である大鋏脚を他個体に対してより高頻度で利用することが明らかとなった。また、オス2個体を1度目の遭遇から1週間後に再遭遇させた群では、貝殻闘争が散見されている。これは、本種の小競り合いを介した個体識別が1週間は継続されないことを示唆する。同属他種の識別は4日間継続するとされており、予備的ではあるが、本研究でも本属の個体識別が数日で忘却される可能性を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者が子のほぼすべての養育を行っており、研究全体を当初の計画通りに進められているとは言い難いため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ホンヤドカリを対象に小競り合いデータの収集・解析に努めるが、新たにテナガホンヤドカリでも同様の実験を実施し、(ii)の解明より適した種を決定して研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者が子の養育をほぼ一人で行わなければならず、研究活動を円滑に実施できなかったために、次年度使用額が生じた。今年度も物品費の他、論文執筆に伴う英文校閲費、実験補助員への人件費及び旅費などの利用を予定している。
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