研究課題
作物の個葉形質の微気象応答およびその品種間差を解明することを目的として研究を進めた。本年度は名古屋大学附属農場東郷フィールドの水田において、ジャポニカ型、インディカ型、野生稲を含むイネ11品種を栽培し、生育期間を通じた個葉の生理特性および非構造性炭水化物量の変化、地上部乾重量および玄米収量の評価を行った。個葉形質の評価法として、携帯型クロロフィル蛍光測定器を用いて、個葉の光合成特性を反映する電子伝達速度をフィールドで測定した。また、400~1000 nmの可視光域を測定可能なハイパースペクトルセンサーを用いた携行型システムを構築し、個葉の分光特性を非破壊的に計測した後に、測定に供試した葉のN濃度と非構造性炭水化物量を測定した。その結果、個葉の分光特性から葉のN濃度を非破壊的に推定可能な式を構築することができた。また、電子伝達速度は葉のN濃度と高い相関を示したことから、フィールドにおける携帯型クロロフィル蛍光測定器による光合成特性の評価の有用性が示された。フィールド環境下で、個葉に蓄積した非構造性炭水化物量が光合成をダウンレギュレートしているかを検証するため、電子伝達速度と非構造性炭水化物量の関係を精査した。その結果、電子伝達速度はグルコース、スクロース、デンプンのいずれとも負の相関を示さなかったことから、フィールド環境下でこれらの非構造性炭水化物は光合成ダウンレギュレーションを引き起こさないことが示唆された。
3: やや遅れている
水田圃場に微気象センサーを設置し、1分間隔で光量子束密度・気温湿度を測定したが、微気象の変化から個葉形質変化を予測するモデルを構築できなかった。クロロフィルやルビスコの定量までに至らなかった。まずは人工気象室などの調節環境下において、環境条件の変化に応じたイネ個葉形質の変化を推定可能なモデルを構築することを目指す。
可視光域の分光器に加え、1000~2500nmの近赤外領域を測定可能な分光器を組み合わせて用いることで、葉のタンパク質量、セルロースなどの構造性炭水化物量、糖やデンプンなどの非構造性炭水化物量、含水量を非破壊的に推定可能なモデルを構築する。また、圃場にリモートモニタリング可能な微気象センサー・ロガーを設置し、微気象測定とデータ解析をスムーズに行えるようにする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Plant & cell physiology
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