名古屋大学附属農場(東郷フィールド)および長野農業試験場(長野圃場)において、前年度に引き続き、イネ群落内外の微気象観測・分光計測から、イネの群落成長を連続・非破壊的に推定する手法の開発を行った。本年度は、イネ移植直後からLAI(葉面積指数)が3 (m2 mー2) までは、イネ群落上部に設置したセンサーにより光合成有効放射および近赤外光の群落からの反射を計測し、それ以降から収穫期までは群落内にセンサーを移動させ、群落を透過した光合成有効放射および近赤外光を計測し続けた。その結果、移植直後から収穫期までの、連続的なLAIの推移を高精度でトレースすることが可能となった。
本手法によって各圃場で得られたジャポニカ型イネ品種(日本晴)とインディカ型イネ品種(北陸193号)のLAI増加特性を、数理モデルによって解析した。説明変数として、X(移植後日数、積算日射、積算気温)を用い、各Xについて、λ(指数関数的な成長の開始に要するX)、k(指数関数的な成長開始後から最大LAI増加速度に至るまでのX)、最大LAIを定量的に得た。その結果、日本晴・北陸193号の両品種とも、最大LAIは長野圃場で東郷フィールドよりも高かった。積算日射に関するλは長野圃場で東郷フィールドで高かったが、積算気温に関するλは両圃場でほとんど変わらなかった。このように、積算日射や積算気温に対する応答性の品種間差・地域間差を定量的に明らかにすることができ、本手法を強力な非破壊的なイネ群落成長評価ツールとして確立することができた。
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